2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J04066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加畑 理咲子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 小児四肢疼痛発作症 / 遺伝解析 / 機能解析 / Nav1.9 / SCN11A |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、1)乳幼児期より始まる、2)四肢大関節に発作性の痛みを呈する、3)青年期に軽快する、4)寒冷、悪天候への曝露で悪化する、5)常染色体優性遺伝を示す、という特徴を持つ疼痛症状を呈する日本人慢性疼痛家系6家系において、SCN11A遺伝子(Nav1.9をコードする遺伝子)のp.R222変異(R222SまたはR222H)が疼痛症状を引き起こしていることを示し、この疾患を「小児四肢疼痛発作症」と命名した(Okuda et al. PLoS One, 2016)。そこで、本疾患の国内実態を明らかにする事、疼痛症状の分子メカニズムを明らかにする事を目的とし、平成29年度は下記2項目の解析および実験を実施した。 1)小児四肢疼痛発作症の遺伝疫学的解析 小児四肢疼痛発作症の疑い35家系を国内複数地域の医療機関より集積し、SCN11A遺伝子p.R222変異の遺伝子型判定を行った。その結果、集積された35家系のうち、12家系がp.R222H/S変異陽性であった。p.R222変異陰性であった23家系について、SCN11A遺伝子のエクソン全体で変異を検索した結果、2家系で海外で既報の変異が検出され、また別の2家系では新規変異が見出された。 2)機能解析 上述の2つの新規変異を持つノックインマウスを作成し、そのDRGニューロンの電気生理学的特性を解析した。その結果、これら変異を持つマウスのDRGニューロンにおいては野生型マウスに比べ静止膜電位が有意に高く、発火頻度が上昇していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)小児四肢疼痛発作症の遺伝疫学的解析 全国の医療機関から小児四肢疼痛発作症疑い患者のリクルートを行い、遺伝解析を実施した。集積された35家系(合計75名、うち患者63名)のうち12家系でSCN11A遺伝子p.R222変異が陽性であった。このことから、疑い症例に対するp.R222変異スクリーニングの有効性が示唆された。p.R222変異陰性であった23家系について、SCN11A遺伝子のexon全体で変異を検索した結果、2家系で既報変異(V1184A, R225C)が検出され、また別の2家系で新規変異(F814C, F1146S)が見出された。一方で、本症に類似した症状を示すにも関わらずSCN11A変異が陰性である家系のうち、一部の症例について全ゲノムシークエンスを実施した。その結果、疼痛発症の原因遺伝子として知られているSCN9A, SCN10A遺伝子変異が各一例ずつ検出された。よって、網羅的な遺伝子検索は疼痛疾患の正確な鑑別に重要であると考えられる。 2)機能解析 2つの新規変異(F814C, F1146S)のノックインマウスを作成し、そのDRGニューロンの電気生理学的特性を解析した。その結果、これらの変異を持つマウスのDRGニューロンにおいては野生型マウスに比べ静止膜電位が優位に高く、発火頻度も上昇していることが示された。また、in vitro解析実施も検討しているが、Nav1.9の発現・機能にはβ1、β2サブユニットの共発現が重要な働きを担うことが既に報告されている(Lin Z et al., 2016)ため、本年度はβ1、β2サブユニットの安定発現細胞株作成を開始した。発現ベクターの作成を行い、細胞への遺伝子導入を行った。安定発現細胞株の候補クローン選定のため、β1、β2サブユニットの免疫蛍光染色およびウェスタンブロット法により、タンパク発現の有無を確認中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)小児四肢疼痛発作症の遺伝疫学的解析 今後も全国の医療機関の協力を得ながら、小児四肢疼痛発作症の疑い患者のリクルートと家系の集積を行い、Nav1.9変異の探索を中心に遺伝子解析を進めていく。本疾患の国内での認知度は徐々に上がってきているものの未だ十分ではないので、論文発表、学会発表等を通じて全国の小児科医や神経内科医に呼びかけ認知度を高めていき、さらなる症例収集拡大につなげていきたい。 2)機能解析 現在作成中のβ1、β2サブユニットの安定発現株が完成次第、Nav1.9の野生型および各変異型のコンストラクトを共発現させる。細胞膜での発現状況の違いや結合タンパクの違いを比較し、気温や気圧などの環境因子との相互作用の解析を予定している。
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Research Products
(4 results)