2017 Fiscal Year Annual Research Report
自伝的記憶の概括化のメカニズムの解明:神経基盤からのアプローチ
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17J04080
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 昇 名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 自伝的記憶の概括化 / うつ病 / 自己参照 / 実行機能 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,自伝的記憶の概括化が生じる神経基盤として,内側前頭前野を中心とした自己参照処理,中央実行ネットワークや顕著性ネットワークを中心とした実行機能系,海馬を中心としたエピソード記憶機能の異常をそれぞれ想定している。平成29年度は,fMRIの予備実験としていくつかの行動データを取得した。 (a)自己参照処理を基盤としたメカニズムを解明するために,単一カテゴリ潜在連合テストを改変した課題を大うつ病エピソード寛解群と健常群に実施したところ,大うつ病エピソード寛解群ではネガティブな特性語と「よくある」概念間の潜在的連合が強いことが示された。次に,大学生を対象として自伝的記憶検索課題中の思考サンプリングを行った。単語の呈示後に浮かんだ自己参照思考や概括的な思考を自己報告してもらったところ,抑うつ傾向群では非抑うつ群に比べて,自己関連性の低い単語の呈示時に自己参照思考や概括的な思考が多く生じることが示された。以上の結果は,抑うつ者において,自己参照処理が自伝的記憶の概括化に関与していることを示すものである。 (b)実行機能系を基盤としたメカニズムを解明するために,複数の実行機能課題と自伝的記憶検索課題を組み合わせた実験を実施した。実行機能課題を,実行機能の3因子モデル(シフティング,更新,抑制)に基づいて分類したところ,更新機能を測定する課題(N-back課題,Running Memory課題)において自伝的記憶の概括化との相関がみられた。このことから,ワーキングメモリ内から不必要な情報を排除する更新機能が低下すると,自伝的記憶の概括化が生じやすくなることが示唆される。 (c)エピソード記憶機能を基盤としたメカニズムを解明するために,Controlled Autobiographical Memory paradigm(CAM)を用いた予備実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,行動実験の実施と並行してfMRI実験の準備を進めた。当初所属した研究室にて研究を行うことができず,研究室を異動したために研究開始が遅れたが,現在はその遅れを取り戻しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
Controlled Autobiographical Memory paradigm(CAM)を用いたfMRI実験を実施する予定である。CAMパラダイムは,実験参加者に大学構内の指定されたオブジェクトの写真を撮影してもらい,その写真を記憶材料としてソース記憶判断を求める,自伝的記憶課題の一種である。平成30年度はこのパラダイムをfMRI研究に援用して,大うつ病における神経基盤の異常の可視化を目指す。 また,並行して,自己参照処理課題を中心とした行動データについても取得を続ける方針である。
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Research Products
(12 results)