2017 Fiscal Year Annual Research Report
メタマテリアルによる生体分子の円偏光二色性の増強効果解明に関する研究
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17J04085
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小口 研一 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / メタマテリアル / 近接場 / 電気光学検出法 / 非線形光学 / 透明電極 / テルル化亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究課題は『メタマテリアルによる生体分子の円偏光二色性の増強効果解明に関する研究』である。そこで増強効果解明に向けて、本年度はテラヘルツ電場ベクトル波形の復元方法の提案と検証実験を行った。本研究ではEO結晶上に金属微細構造(メタマテリアル)を描画して、メタマテリアル周辺の近接場の可視化を目指す。近接場を可視化する為には、正確にテラヘルツ電場ベクトル波形を測定することが必要となる。しかし、EO結晶を使用してテラヘルツ電場ベクトル波形を測定する場合、実際に空気中を伝搬する波形を正確に測定することはできない。なぜなら、EO結晶の屈折率は周波数に依存する為、テラヘルツ電場と近赤外プローブ光パルスは異なる速度で結晶内を進むからである。このことは一般に位相不整合があると言われ、測定されるテラヘルツ電場ベクトル波形の波形形状を歪める大きな一因となっている。 そこで、位相不整合を始めとする様々な効果を考慮して、測定波形から実際に空気中を伝搬する波形を復元する方法を提案し、その検証実験を行った。検証実験では、ZnTeとGaPという2種類のEO結晶を用いて同一の電場ベクトル波形を測定した。上述した通り、使用するEO結晶を変更するだけで測定波形の形状は大きく変わってしまう。しかし、本研究で提案した復元手法を用いることで非常に形状の近い2つの電場ベクトル波形を復元することに成功し、復元手法が実際に機能していることが確かめられた。この成果はアメリカ光学学会の学会誌に既に出版されており、本論文は学会誌のEditor's pick.に選ばれた。(The article with excellent scientific quality and are representative of the work taking place in a specific field.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、研究実績の概要で説明した通り、今年度主に行った『テラヘルツ電場ベクトル波形の復元方法の提案と検証実験』に関する成果はアメリカ光学学会の学会誌に出版されており、自身の研究成果を順調に公表することができた。その他の成果については、まだ成果を出版する段階までは到達していないが、メタマテリアル、及び『増強効果解明』に使用する為の近接場イメージング装置の作成にも成功した。 しかし、研究実施計画に記載した近接場イメージング結果の定量的な評価については十分には行えなかった。原因は光源として使用している再生増幅器の不安定性であると考えられる。光源の光強度が安定しない為、実験結果の不確かさが大きく、上記のような定量的な評価が行えなかったと考えられる。 そこで『中赤外領域での電場ベクトル波形の計測、及びその検証実験』を海外の研究室と共同で始めた。中赤外領域での測定を開始した理由は、この周波数帯では多くの分子内振動に由来する円偏光二色性が観測され、将来的に近接場イメージング装置をテラヘルツ周波数領域から中赤外領域へと拡張する上で大いに役立つはずであると判断した為である。結果、本研究にて提案したテラヘルツ電場ベクトル波形の計測手法は、そのまま周波数の高い中赤外領域へと拡張できることが分かった。現在、この中赤外領域での測定という成果の学会発表を検討しており、更に中赤外領域用に最適な測定を提案することで、この成果を論文化することも検討している。 本年度の進捗を纏めると、波形復元と検証に関して大きな進捗があり、一方でイメージング測定について当初の計画より進捗が遅れている。当初の計画になかった中赤外領域での測定に関しては少しずつだが進捗があり、これはイメージングの進捗遅れを補える成果だと自負している。よって総合的に(2)の区分が妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】で述べた通り、自作したイメージング装置に関してはレーザー光源の不安定性の為、当初予定していた通りの性能を発揮させることが難しかった。一方で海外の研究室と共同で行った中赤外領域での電場ベクトル波形計測に関しては予想以上の成果が達成でき、今後もより大きな成果が期待できると考えている。そこで、本年度は共同研究先に赴き、中赤外領域での測定を継続して行いたい。
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Research Products
(3 results)