2018 Fiscal Year Annual Research Report
魅力知覚における無自覚的・自覚的視覚情報処理の認知神経科学的メカニズムの解明
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17J04125
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 航洋 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 認知科学 / 実験系心理学 / 魅力 / 顕在・潜在 / 顔認知 / 顔印象 / 注意 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は魅力知覚における無自覚的・自覚的視覚情報処理の認知神経科学的メカニズムについて知覚心理学と神経科学の両面から検討することを目的とする。本年度は主に以下の2つの研究課題に取り組んだ。 研究1 (顔魅力知覚の無自覚的視覚情報処理プロセスに関する実験心理学的研究):顔魅力知覚とそれに伴う魅力顔への注意捕捉が顔の意識的知覚経験を必要とするかについて,閾下刺激提示法である連続フラッシュ抑制法を用いて一連の知覚心理学的実験を実施した。実験の結果,魅力的な顔特徴を備えた顔は閾下提示した場合でも,意識下で強く注意を引きつけることが明らかになった。さらに,この現象は単に顔画像の低次視覚特徴の影響によるアーティファクトではないことが確認された。 研究2 (顔印象を規定する顔特徴の数理モデル化に関する研究):顔の魅力印象と支配性印象を規定する顔の物理特徴に関する研究に取り組んだ。顔の個性や印象は,顔の形状や色など,多様な顔の物理特徴の複雑な組み合わせに基づいて知覚される。そのため,本研究では,この複雑な顔特徴の組み合わせと主観的な印象の関係を計算モデリングの手法で定量化することを試みた。その結果,顔の魅力は目の大きさや肌の明るさといった物理特徴によって規定されている一方で,顔の支配性印象は,眉の角度や鼻翼の幅といった特徴によって規定されていることが明らかになった。魅力を含めた顔印象を,顔の物理特徴から観察者の無意識的な印象知覚メカニズムまでの一貫した枠組みで捉えることによって,印象知覚のメカニズムを明らかにしようとする点で本研究は新規な顔印象研究スタイルを確立しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究1に関する成果は国内外の学会において随時発表し,一部の成果については査読付き国際誌に掲載された。研究2に関する成果は国内外の学会で発表し,そのうち1件の発表については日本心理学会学術大会特別優秀発表賞を受賞した。さらに,研究2に関する一部の成果は既に査読付き国際誌への掲載が決定しており,後続の研究については現在査読付き国際誌への投稿準備を進めているところである。以上の点を踏まえ,研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に遂行した研究により,知覚心理学的アプローチによる顔魅力研究法と計算モデリングによる顔印象分析手法をそれぞれ確立できたため,今後は両アプローチを統合し,顔魅力知覚の認知神経科学メカニズムを明らかにするための研究を進展させる予定である。また,本年度に得られた研究成果については,順次論文としてまとめ,査読付き国際誌への投稿を進める。
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Research Products
(15 results)