2017 Fiscal Year Annual Research Report
硬X線・軟ガンマ線観測による銀河団内部の非熱的現象の解明
Project/Area Number |
17J04197
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 悠介 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 非熱的放射 / シンクロトロン放射 / 偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
硬X線・軟ガンマ線帯域での銀河団の非熱的な放射を捉えることは、熱的な放射が優勢であるために難しい。そこで、銀河団に限らず、軟ガンマ線帯域でのこれまでにない高感度観測を目指して設計開発が進められてきた「ひとみ」衛星搭載軟ガンマ線検出器(SGD)の研究に携わってきた。 本年度は、SGDの観測データ解析を中心に行った。非熱的放射の一つは、天体内部または周囲に存在する磁場による影響を受けるSynchrotron放射である。この放射光は磁場の影響により偏光している。放射光の偏光情報は画像・分光・時間解析に次ぐ4番目のプローブとして注目されている。そこで、非熱的放射が優勢な硬X線・軟ガンマ線帯域で偏光の検出可能性についてSGDで検証するべく、打ち上げ後の試験観測データの解析を行った。SGDは独自のコンセプトで設計されており、その主検出器はSi/CdTeコンプトンカメラである。コンプトンカメラは60-600 keVでの分光観測を目的とした検出器であるが、その構造から偏光解析に対しても十分な感度があると地上実験で証明された。コンプトンカメラ内でどのような物理過程を経て検出されたかのか再構成を行うために、SGDに6台搭載されているコンプトンカメラの79872チャンネルそれぞれに対してエネルギー較正曲線を用意した。また、偏光解析において重要となる無偏光レスポンスを用意するため、検出器を再現するモンテカルロシミュレータを用意した。SGDの試験観測は、シンクロトロン放射で輝くかに星雲を有効時間で1時間20分のみ行った。その結果を統計的な裏付けを行いつつ解析することで、偏光を検出することができた。この結果は2018年春季天文学会で発表し、論文の投稿準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、硬X線・軟ガンマ線による非熱的放射の解明を目指し、「ひとみ」衛星に搭載された軟ガンマ線検出器の軌道上での性能評価を行った。短時間で得られたデータを詳細に解析することにより、他の検出器に比べて短い時間ながらもかに星雲からの偏光を検出した。その解析の際に、軌道上で得られたデータを元に解析に必要な較正データ及びレスポンスファイルを作成した。本年度の結果により、天体からの非熱的放射による硬X線・軟ガンマ線帯域での偏光を測定可能であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
SGDの解析結果をまとめた論文を執筆する。また、銀河団からの非熱的放射をSGDで観測することは不可能であるため、すざく衛星の硬X線検出器を用いる。電波源を有する銀河団を系統的に解析し、銀河団の加速現象について迫る。HXDでの検出が見込めない場合でも、銀河団内部の磁場情報に制限をつけることを目指す。
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Remarks |
本研究で作成した較正曲線及びレスポンスファイル
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Research Products
(2 results)