2017 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデルが示す認知機能障害と疾患関連シナプス特性との関連
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17J04224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 福寿 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | シナプス / 統合失調症 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプスは統合失調症(SZ)の病態に関与すると考えられ、モデル動物においてもシナプス異常が報告されているが、シナプス異常が如何にして行動異常を惹起するかは未解明である。我々はSZ様の表現型を示す2種類のマウス(Disc1 Knockdown(KD), Calcineurin Knockout)の前頭前野において、巨大な樹状突起スパインが散在し、認知機能を反映する作業記憶に障害を示す事を見出した。この2種のモデルマウスに共通する所見が巨大スパインであることから、本研究ではこの巨大スパインがSZモデルの病態に重要なのではないかという仮説を検証するため、神経細胞の発火や個体行動への影響を解析する。 この目的のため、Disc1遺伝子機能阻害の影響がシナプス以外へも及ぶ従来型のDisc1 KDモデルに代わり、シナプス発達におけるDisc1を選択的に阻害するConditional Disc1 KDモデルを本年度に樹立した。共焦点顕微鏡・2光子励起顕微鏡を用いて樹状突起スパインの形態を解析し、当モデルでも巨大スパインが出現することを明らかにした。 また、巨大スパインの特性を明らかにするための各種実験系の確立を行った。2光子グルタミン酸アンケージング法と電気生理学的手法を組みわせることで、巨大スパインや隣接する通常サイズのスパインでのシナプス後電流を単一スパインレベルで計測する。同時に樹状突起でのイベントを観察するためにGCaMP6fカルシウムイメージング法を上記のアンケージング法と併用できる実験システムの構築を行った。これらの実験系により巨大スパインが樹状突起コンピューテーションへ与える影響、さらには神経発火への寄与に関しての理解が進むことが期待される。加えて、個体レベルでの影響を観察するために、認知機能を測定する行動実験系(新奇物体認識試験やプレパルス抑制)を研究室内で立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で樹立したConditional Disc1 Knockdownモデルの樹状突起スパイン形態解析により、巨大なスパインが観察されることを明らかにした。また、巨大スパインが神経発火や個体行動へ及ぼす影響を評価するための2光子グルタミン酸アンケージング法および電気生理学的実験手法、個体行動解析法の確立を達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当モデルマウスの行動解析(新奇物体認識試験やプレパルス抑制等)により、認知機能を反映する作業記憶の障害の有無を検証する。 また、2光子グルタミン酸アンケージング法や電気生理学的実験により、巨大スパインの電気的な特性や、神経発火に対して及ぼす影響について明らかにする。
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