2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J04317
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 謙太 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | F特異点論 / F純閾値 / 昇鎖条件 / 代数幾何学 / 特異点論 / 判定イデアル / 正標数 |
Outline of Annual Research Achievements |
正標数の代数多様体におけるF純閾値の昇鎖条件について研究を行った.F純閾値とは,正標数の代数多様体とその上のイデアル層の対に対し定まる非負実数で,対としての特異点の悪さを反映する量である.それはフロベニウス写像によって定義される正標数特有の量であるが,標数0における対数的標準閾値との間に良い対応があることが知られている. Hacon-McKernan-Xuらが証明したように,標数0においては「対数的標準閾値の昇鎖条件」が成立している.これをうけて,Blickle-Mustata-Smithらは正標数の滑らかな代数多様体の芽を固定して,イデアルを全て動かすとき出てくるF純閾値の全体のなす集合は昇鎖条件を満たすと予想した.今年度は,判定イデアルの精密な議論と体の超積を用いた超越的な手法をうまく組み合わせることにより,彼らの予想を肯定的に解決した.またその証明は,Xが滑らかでなくても,強F正則というmildな特異点しか持たない場合にも同様の昇鎖条件が成立していることを示している.この結果は論文にまとめて現在投稿中である. また,更なる拡張として,特異点の仮定を強F正則から鋭F純まで弱めること,及び,埋め込み次元を固定しながらであれば多様体の芽も動かすことができることを示した.この証明の鍵となったのは,F純閾値の「有理性」である.多様体が強F正則である場合には,その多様体のイデアルのF純閾値が有理数なることがSchwede-Tuckerらによって示されていた.この結果を鋭F純の場合に拡張することに成功した.この有理性と,Schwedeにより整備されたF-adjunctionの理論を組み合わせることで,鋭F純な多様体の芽の上でのF純閾値の昇鎖条件が示される.この結果は,現在投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,今年度は2次元正則多様体の芽に限定して昇鎖条件を検証する予定であったが,上述のように高次元かつ特異点のある場合について証明することに成功したため.
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Strategy for Future Research Activity |
Hacon-McKernan-Xuらによる標数0の先行研究の正標数化という観点で考えると,イデアルに係数をつけた場合と,多様体の芽を「埋め込み次元」でなく「クルル次元」を固定して動かす場合についてもF純閾値の昇鎖条件が成立することが期待される.今後はこれらの一般化を目指して研究を行う. また,同時に幾何への応用も探っていく.
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Research Products
(6 results)