2017 Fiscal Year Annual Research Report
ALMA望遠鏡で解き明かす円盤銀河から楕円銀河への進化過程
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17J04449
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
但木 謙一 国立天文台, チリ観測所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 銀河進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
電波サブミリ波干渉計ALMA望遠鏡を用いて赤方偏移4.3(120億年前)の宇宙にある爆発的な星形成銀河に付随した分子ガス(COJ=4-3輝線)をこれまでにない高い空間解像度(0.08秒角、540 pc)で観測する観測提案書を提出し、最優先課題として採択された。観測は初年度中に実行され、観測した銀河の運動学的・物理的性質を調べるための解析を行った。このような銀河に見られる爆発的な星形成活動は銀河同士の合体によって引き起こされていると期待されていたが、実際には近傍宇宙にある円盤銀河のように、秩序だった回転運動を示していることが新たにわかった。またこの回転円盤中の分子ガスが重力的に不安定であり、銀河の中心1 kpcに存在するガス円盤での効率的な星形成活動は、楕円銀河におけるバルジ形成と密接に関係していると考えられる。
その他にも、ALMA望遠鏡で赤方偏移2-3(100-110億年前)の宇宙にある100個の星形成銀河を観測する観測提案も初年度に最優先課題(グレードA)として採択された。これまでの研究では、銀河サンプルの数が10個程度と少なかったために、観測結果がサンプルの選択手法に依存することが他の研究グループから指摘されていたため、今回は星質量が1e11太陽質量より大きな銀河を全て選択し、ハッブル宇宙望遠鏡と同程度の0.2秒角の空間分解能で観測することで、銀河内の若い星によって熱された塵の放射の空間分布を徹底的に調べるものである。観測は採用2年目にあたる2018年秋頃に行われる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の柱は、電波サブミリ波干渉計ALMA望遠鏡を用いた遠方銀河の観測にある。従って初年度は遠方銀河の観測を行う3本の観測提案書を提出し、幸い3本とも最優先課題として採択していただいた。3本の提案書を合わせた総観測時間は53時間に及び、これは東アジア地域での遠方銀河研究に割り当てられた全観測時間の23%に相当する。
採択された3つのプロジェクトの1つは2017年10、11月に観測が完了し、12月に観測データが手元に届いた。このプロジェクトは、赤方偏移4.3(およそ120億年前に相当)の時代にある爆発的な星形成活動を伴う銀河を観測するもので、0.09秒角というこれまでにない高い空間解像度のデータに基づいて、星形成の材料となる分子ガスの分布・運動を詳細に調べた。観測した銀河は総星質量が1011太陽質量と、この宇宙初期の時代においては、最も重いことが知られている。現在宇宙では最も重い銀河と言えば、楕円銀河であり、本研究課題『円盤銀河から楕円銀河への進化過程』を解き明かす上で、最良のターゲットと言える。現在の宇宙においても、爆発的な星形成を伴う銀河は稀に存在しているが、その多くは銀河の衝突合体が引き金となって、角運動量を失った分子ガスが銀河中心に落ち込むことで、星形成が活発化していると考えられている。アルマ望遠鏡によって取得したデータの質は期待していた以上に高く、ターゲットである銀河は爆発的な星形成活動を伴っているのにも関わらず、合体の兆候は見られず、きれいな回転円盤が観測された。この回転円盤における分子ガスの自己重力とそれに逆らう力のバランスの定量的な評価を行い、自己重力が勝ることを明らかにした。このプロジェクトについては、2017年12月、2018年1月は集中的にデータの解析を進め、2018年2,3月に論文の原稿を執筆し、共同研究者への回覧も行い、投稿の準備を終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に観測を行なった赤方偏移4.3にある爆発的な星形成活動を伴う銀河のCO(4-3)輝線のデータ解析を引き続き行うと共に、アルマ望遠鏡を用いて新たな追観測を行っていく予定である。具体的には以下の2つの観測を考えている。
1. 0.04秒角の超高空間分解能でのCO(7-6)輝線の観測。この観測によって銀河中心にあるスターバースト核の運動的・物理的性質を世界で初めて調べることが可能となる。
2. 0.15秒角の高空間分解能での酸素輝線と窒素輝線の観測。窒素輝線と酸素輝線の強度比はガス中にある金属量の指標となるため、この観測によってダストに覆われた星形成銀河の金属量の空間分布を世界で初めて調べることが可能となる。
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