2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒を駆使した1,3-ポリオールライブラリーの構築
Project/Area Number |
17J04451
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 晃 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 1,3-ジオキサン / 分子内オキシマイケル付加 / アミノチオウレア触媒 / 1,3-ポリオール / 動的速度論的光学分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
高い生物活性を有する化合物に多く含まれる光学活性1,3-ポリオール構造を迅速かつ精密に合成する手法は、医薬品開発において重要な基盤技術になり得るため、精力的に研究が行われている。本研究では、1,3-ポリオール構造の構築に有用なキラルビルディングブロックとして機能する1,3-ジオキサンの新規触媒的不斉合成法を開発した。既に当研究室で開発された1,3-ジオキサン合成法では触媒としてキラルリン酸のみが適用可能であり、基質としてカルボン酸誘導体が適用できない等の制約があった。本研究では、二官能性アミノチオウレアを利用した触媒系を新たに開発し、従来法では困難であったエステル基やチオエステル基を末端に有する1,3-ジオキサンの高エナンチオ選択的な合成を達成した。カルボン酸誘導体は様々な官能基への変換が可能であり、合成中間体として有用であることから、これらの生成物は光学活性1,3-ポリオール化合物の合成におけるキラルビルディングブロックとしての利用が期待できる。さらに、二官能性アミノチオウレア触媒の高い分子認識能を利用し、本手法を動的速度論的光学分割を伴う1,3-ジオキサンの不斉合成法へと展開した。その結果、三成分反応によって三つの不斉点を有する1,3-ジオキサン生成物を高エナンチオ選択的かつ高ジアステレオ選択的に得ることに成功した。いずれの結果も本研究の最終目標である1,3-ポリオールライブラリー構築法の開発に大きく貢献する結果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は光学活性1,3-ポリオールの合成に有用なキラルビルディングブロックとして機能する1,3-ジオキサンの不斉合成法を新たに開発し、これまでに達成したものも含めて多様な末端官能基を有する光学活性1,3-ジオキサンの合成が可能になった。これによりビルディングブロックのより多彩な変換が可能になったため、1,3-ポリオールライブラリー構築を指向した本研究は着実に進展していると言える。計画当初の目標である相対立体配置の異なる1,3-ジオキサンの不斉合成は現在のところ達成されていないが、本研究の反応条件最適化の段階で立体選択性の変化に関する重要な知見も得られており、更なる調査によって目的が達成されることも大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
末端にホルミル基を有する1,3-ジオキサンの不斉合成法の開発に着手する。通常のバッチ系では過剰反応が懸念されるため、フローマイクロ反応器を用いた空間的集積化を利用することでその効率的合成の達成を目指す。目的物が得られた場合、他のビルディングブロックとのアルドール反応による分子連結を行い、より長鎖の1,3-ポリオール構造の構築法へ展開する。また上述の通り、既に得られている1,3-ジオキサン合成反応の立体選択性に関する知見を活かし、これまでとは異なる相対立体配置を有する1,3-ジオキサンの不斉合成法を開発する。
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