2017 Fiscal Year Annual Research Report
多様体の幾何構造とその上のシュレディンガー方程式の関係
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17J04478
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平良 晃一 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | シュレディンガー方程式 / 自己共役性 / 超局所解析 / 非楕円型 / 散乱理論 / スペクトル理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に得られた主な研究成果は以下のものである。 (1)以前得られていた、ユークリッド空間上の非退化シュレディンガー作用素の本質的自己共役の結果(中村周教授との共同研究)を次のように大幅に拡張した。一点目に、以前は計量の摂動がコンパクトな台をもつ場合に限っていたが、これを長距離型摂動の場合に拡張した。二点目に、以前はシュレディンガー作用素として非退化計量に付随するラプラシアンのみを考えていたが、これを実主要型と呼ばれる一般の擬微分作用素にまで拡張した。証明にはメルローズによる、ある種の特異性伝播定理を用いる。 (2)上記(1)の結果と対照的な結果として、閉Lorentz多様体上のシュレディンガー作用素で本質的自己共役でないものを構成した。これには、余接束の動径方向に関する散乱理論と特異性伝播定理を用いる。今後、これをより一般的な場合に拡張することを考えている。 (3)各方向の比が無理的である平坦ローレンツトーラス上のシュレディンガー作用素のスペクトルに興味深い性質をもつことがわかった。トーラスの次元が3以上のときにはスペクトルは稠密な点スペクトルをもち、次元が2のときにはスペクトルの形は方向の比を表す無理数の数論的性質に依存する。今後、この現象を測地流の力学的性質と関連させて研究していく。 (4)Hans-Christianson氏(North Carolina大学)との共同研究で、対称空間上の三角形のDirichret固有値問題の半古典極限についての研究が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非退化シュレディンガー作用素の本質的自己共役性を当初の予定よりも大幅に拡張する形で示すことができ、また閉多様体上のシュレディンガー作用素の本質的自己共役性についての研究でも一定の成果が得られた。リーマン面上のストリッカーツ評価についてはめぼしい結果は得られなかったが、双曲多様体での固有関数についての研究も進んでおり、この問題に対する理解が深まっている。以上の理由から、順調に研究計画が遂行されていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、開多様体上での楕円型でないシュレディンガー作用素の散乱理論の構成について考察していく。また、閉多様体上 のシュレディンガー作用素の本質的自己共役性、スペクトル理論についてもより理解を深めていくことも目標とする。また、ストリカーツ評価についての理解を深め、研究するため固有関数の半古典極限での挙動、レゾルベントの挙動についても考察していく予定である。
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Research Products
(5 results)