2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J04656
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
原口 大輔 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(PD) (00756497)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 帝国議会 / 議会政治 / 貴族院 / 議会官僚 / 議会事務局 / 二院制 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)史料調査状況 本年度は戦中・戦時下の議会運営とそれを支える議会官僚の動向を分析するため、国立国会図書館憲政資料室所蔵「寺光忠関係文書」、「近藤英明関係文書」、議会官僚・政治家である河井弥八の史料(掛川市教育委員会所蔵「河井家文書」)の分析も行った。また、德川宗家第18代当主・恒孝氏が所蔵している「德川宗家文書」のうち、近現代に関する史料を整理に着手した。ただし、所蔵者の意向もあり当該史料の全面的な公開までは暫くの時間を要するが、これらの史料が研究に利用されることとなれば貴族院や議会政治研究は著しく進捗することが期待できる。 (2)研究状況 上記の史料をもとに、1930年代の議会政治の検討に着手したところ、当該期の政治家や社会があるべき帝国議会をどのように捉えているか、あるいはいつの時期の姿に戻るべきと考えていたかを改めて分析する必要に迫られた。そこで、当初の計画を修正し、より広範囲にわたる時期の帝国議会の分析を開始した。その中で着目したのが明治憲法第42条である。この規定は帝国議会の会期を3ヶ月と定め、会期延長、停会を行う際には勅命が必要としたものである。すなわち、各内閣が自由に会期日程を左右することはできず、効率的な法案成立を目指した議会運営の工夫が求められる一方、議会側、とりわけ解散のない貴族院にとっては議事を遷延させるなどコントロールすることで内閣や衆議院に強いプレッシャーを与えることが論理上可能だった。このような明治憲法の枠組みのもと、貴族院議長・近衛篤麿による議会指導と第四次伊藤博文内閣、第一次桂太郎内閣との関係を分析した(「貴族院議長・近衛篤麿と貴衆両院関係の岐路」)。また貴衆両院を視野にいれた研究として、会期日程と内閣・議会の協議・妥協の場に着目し、いわゆる桂園内閣期にその政治文化が定着し、それゆえ本会議が形骸化していく過程を示した(「桂園時代」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に若干の修正を施したが、それは史料を調査した結果、本課題を遂行するうえでより重要な論点を発見することができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の計画通り、今年度調査した史料をベースに、1930~40年代の議会政治の変遷とその中における「第二院」貴族院の位置付けを分析する。その成果は随時口頭報告や論文として発表していく。
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