2017 Fiscal Year Annual Research Report
三重項励起子のエネルギー・スピン特性を引き出すナノ界面場の精密制御技術の創成
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17J04721
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
細山田 将士 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 分子集合体 / 三重項励起子 / フォトン・アップコンバージョン / 一重項励起子分裂 / Triplet DNO |
Outline of Annual Research Achievements |
三重項-三重項消滅に基づくフォトンアップコンバージョン (TTA-UC)、一重項励起子分裂(SF)、三重項スピンを利用した動的確偏極(TripletDNP) と近年、三重項励起子のエネルギー・スピン状態を利用した機能分野が注目を集めている。これらの機能の効率化を図るためには、エネルギーまたはスピン情報を他の分子へ高効率に伝達する必要があり、本研究では、その効率的な伝達過程を示す分子集合体の構築を目指した。 TTA-UCの発現には、複数の色素分子を必要とする。これらを規則的に集積化する手段として、金属イオンと有機架橋配位子からなる多孔性金属錯体 (MOF)の構造に注目し、本研究では、その構造モチーフを転写した配位ナノファイバーという全く新しい分子集積構造の設計指針を提案した。脂溶性アクセプター配位子とアルミニウムイオンとを錯形成することによって得られた錯体は、高速原子間力顕微鏡測定によって、発達した一次元ファイバー構造を有していることが明らかになった。配位結合により一次元に組織化する配位ナノファイバーは、分子構造、サイズの異なるドナー配位子を任意の割合で均一に集積複合化することを可能にした。この配位ポリマーの溶液に、レーザー光を照射したところ、明確な UC 発光が観測され、約10 % という高いUC効率を示した。また溶液を希釈してUCの評価を行ったところ、濃度に依存しない一定のUC効率が得られたことから、TTA-UC における全てのエネルギー移動過程がポリマー鎖内で起こっていることが明らかとなった。Al-Oという比較的強い配位結合で組織化されたこの配位ナノファイバーは、低濃度条件下でも安定して存在し、その性質によって、従来困難であった溶液濃度に全く依存しないUCシステムが本研究で初めて達成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、異なる複数の色素分子を集積する手法として、これまで固体材料分野で展開されてきた多孔性金属錯体の構造モチーフを転写した配位ナノファイバーという新たな分子集合体の設計指針を打ち立てた。本研究によって設計された配位ナノファイバーは高効率なTTA-UCを達成しただけでなく、新規UC材料設計の指針を示した意義ある成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで得られた設計指針をもとに、他の三重項機能分野、一重項励起子分裂・三重項スピンを利用した動的確偏極(TripletDNP) の効率化、高機能化を達成する分子集合体の構築に注力する。
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