2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a state-space model of leaf photosynthetic characteristics for regulation and forecast of whole-plant photosynthesis
Project/Area Number |
17J04736
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
村上 貴一 山口大学, 創成科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 分光画像計測 / PRI / 光合成光利用効率 / 光合成電子伝達 / モニタリング / 空間分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、光環境に応じた植物個体の各個葉の光合成特性の推移を時系列モデルとして表現することである。このモデルを用いて、近い将来までの環境条件のもとでの個体総光合成量を制御・予測することを目指す。平成29年度は、モデルの説明変数となる葉の受光量 (葉面における光合成有効光量子束密度) および光合成光利用効率 (受光量あたりの総光合成速度) を空間的かつ経時的に推定するための研究を行った。 1) 受光量 透過波長帯を限定した葉面反射画像中の画素濃度値は、受光量との間に正の相関を示すことが報告されている。本研究では、青緑波長帯透過型の光学フィルタとCMOSカメラを用いた分光画像計測により、一定の光源光質のもとでは、対象葉の葉齢および乾燥状態に依らず受光量を比較的安定的に推定可能であることを示した。 2) 光利用効率 分光パラメータPRI (Photochemical Reflectance Index; 光化学反射指数) は光利用効率を反映するとされる。本研究では、透過波長帯の異なる2種の光学フィルタとCMOSカメラを組み合わせた分光画像計測により、1) PRIの空間的かつ経時的な計測が可能なこと、2) PRIの絶対値の代わりに暗条件下での値からのPRI変化量を説明変数とすることで、光利用効率をより正確に推定可能であること、を示した。また、3) 光照射開始後のPRIの応答は光利用効率の応答と比較して遅いこと、4) 阻害剤により光合成電子伝達に機能不全を生じさせた葉のPRIは光照射に対して応答しないこと、を明らかにした。これらの結果は、PRIに基づく推定により光利用効率が過大評価される可能性を示唆する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次年度以降の研究を進めるための基礎となる研究を概ね予定通り進めた。CMOSカメラおよび光学フィルタを用いた分光画像計測により、葉の受光量および光合成光利用効率を推定することが可能であることを示し、推定を制限する条件を明らかにした。イメージング対象となる葉の重なり、撮像領域の不足などの技術的な問題があるため、供試植物の変更を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
個体内の各個葉の受光量および光合成光利用効率を入力として、個体内各葉の光合成特性を推定する時系列モデルを作成・検証する。まずは、本モデルの推定対象である最大光合成速度をモデル化すべく、cytochromeの光環境要素に対する応答を解析する。最大光合成速度を既定する光合成系タンパク質であるcytochromeは展開期の幼葉でのみ合成され、成熟葉では光強度の低下により不可逆的に減少することが報告されている。展開期および老化期の光環境に対するcytochrome量および最大光合成速度の推移を簡単なモデルとして表現することを試みる。
|