2017 Fiscal Year Annual Research Report
ソーラーSOEC展開に向けた対流抑制型ソーラーレシーバ開発とシステム設計
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17J04749
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中倉 満帆 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 再生/持続可能エネルギー / 太陽熱 / ソーラーレシーバ / 多孔質体 / 連成数値シミュレーション / 熱工学 / エネルギー学 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験では、熱流束測定装置の設計・製作・測定実験、また検証用レシーバの設計と製作まで行った。新潟大学熱工学研究室が保有する太陽光シミュレータの熱流束分を測定するために、ガードン計走査による測定装置を構築した。これより、今まで不明であった同シミュレータの熱流束分布を把握することでき、その分布を数値解析へと応用することが可能となった。また、検証用レシーバには空隙率35%の黒色アルミナ多孔質材を使用する。また、新たに構築する数値計算手法の検証のため、多孔質中央部に非貫通の穴開け加工を施し、集光加熱時の多孔質内部温度を測定可能とした。そのため、熱電対や圧力センサー取り付け位置や断熱の仕方に工夫を施した。 数値解析では、デュアルセル法による固気混合系数値解析手法によって、実験用レシーバをモデル化した計算を行った。レシーバの開口部径と配置方向による浮力が温度場・速度場に与える影響を明らかにした。タワー型の水平配置ではレシーバ開口部からの強い上昇流と上部フレーム近傍での温度分布の偏りが大きな熱損失を生むことが確認された。集光照射量や空気質量流量によるが、ビームダウン型ではタワー型と比較して最大で約200K高いレシーバ出口空気温度が取得可能であることを示した。また、上記のような浮力が強く働く温度場・流れ場において、スパン方向への2次流れの存在を明らかにした。レシーバ内部において、強力な上昇流が駆動力となり、主流方向に垂直な向きに渦構造を形成することを初めて明らかにした。 また、後期より上記数値解析手法を発展させ、ハニカムレシーバ単流路についてのふく射-対流-伝導複合伝熱問題に取り組んだ。ハニカムの単流路について、DO法によるふく射入射と反射、吸収、再放射解析と熱・流体解析ソルバーを連成した計算手法を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的な化石燃料枯渇の懸念と二酸化炭素排出軽減の要請から、各国で再生・持続可能なエネルギーの効率的利用技術に関する研究が行われている。集光型太陽熱利用もその1つであり、発電や燃料化サイクルの高温高効率稼動のための集光集熱技術開発が行われている。 本研究では、集光型太陽熱発電と固体酸化物型電解セルSOEC(Solid Oxide Electrolyzer Cell)を組合せた太陽熱による燃料化システムを考案し、その光熱変換要素であるレシーバについて基礎熱・流体工学的観点から実験・数値シミュレーションによる研究を行っている。 実験では、これまで不明であった太陽シミュレータの熱流束分布を、数パターン出力を変更して測定することが出来た。これにより、検証用レシーバの設計や実験方針を立てることができ、また数値解析へ応用することで実機と同条件を与えた数値シミュレーションが可能となった。また、レシーバの設計・製作、多孔質体の加工、必要な実験用品の購入を済ませ、次年度の実験への準備を済ませた。研究計画上、本実験は今後取り組む高度な多孔質とふく射-対流-伝導連成数値解析モデルの構築・検証に重要な役割を持つ。 一方、数値解析では、実験と同条件での計算、レシーバの開口部径と配置方向が温度場・流れ場に与える影響を計算した。本研究では、レシーバはビームダウン型集光系に合わせて垂直に配置される。一方で、一般的なソーラーレシーバは、タワー型集光系に導入されるため水平に配置される。この垂直・水平配置の違いによって、2000℃付近まで到達するレシーバの内部では浮力が強く影響することが予測される。今年度は、これを数値解析により明らかにし、7月にイギリス・ブルネル大学で行われたSOLARIS2017等にて口頭による発表を行っている。また、1本の論文としてまとめ、エルゼビア社の学術雑誌Energyに掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
実験では、前年度設計した検証用のレシーバを、新潟大学熱工学研究室が保有する太陽シミュレータに導入し、集光照射量や空気質量流量、また集光距離を変更した実験を行う。本実験により、レシーバ内部に設置された直接集光照射を受ける多孔質体内部の温度分布を取得し、これを今年度構築する新たな連成解析手法の検証へと使用する。また、空隙率や屈曲度、空隙の水力直径、通気率等が異なる多孔質体をテストすることで、対流及び再放射を抑制した新型レシーバ開発に向けて、統計的なデータ取得を行う。 数値シミュレーションでは、前年度後期から開始したハニカムレシーバ単流路におけるふく射-対流-熱伝導の直接連成解析手法を進める。単流路形状を変更し、光の入射角や空気流量を変更した計算を行い、ソーラーレシーバにおける複雑な熱伝達状態を解析する。また、本直接計算から得られた知見を今年度新たに取り組む連続体近似した多孔質の連成解析問題へ応用する。単流路スケールのみしか取り扱えなかった上記手法を、連続体として近似した多孔質領域での熱・流体解析へ拡張することで、新規性のあるソーラーレシーバ評価・開発法を構築することが出来る。本手法の検証のために、上記の実験データが必要である。 ハニカムレシーバ単流路におけるふく射-対流-熱伝導連成解析について、光の入射角度が伝熱現象に与える影響について5月に札幌で開催される第55回日本伝熱シンポジウムにて口頭発表を行う。流路形状や空気質量流量が与える影響を8月に中国北京で開催される16th International Heat Transfer Conferenceにてポスター発表を行う。単流路連成解析と連続体解析をそれぞれ論文としてまとめ、エルゼビア社の学術雑誌Solar EnergyやInternational journal of Heat and Mass Transferへ投稿する。
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