2017 Fiscal Year Annual Research Report
DNA結合タンパク質の標的認識確率による機能制御の解明
Project/Area Number |
17J04802
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 優志 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | DNA / 標的認識確率 / DNA結合タンパク質 / 一分子蛍光観察 / cAMP受容体タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
初めに、共同研究先の先生と議論を行い、cAMP受容体タンパク質(cAMP Receptor Protein: CRP)を用いることを決定した。また、短いDNAではなく、市販の長いDNAを使用することも確認した。タンパク質試料を得るために共同研究先であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校に渡航した。標的認識確率の制御が一般的なメカニズムかどうか解明するために、渡航先でCRPの標的配列との結合を観察する実験を行った。先ず、作製していただいたCRPを蛍光色素ATTO488で修飾した。次に、DNAをガラス基板上に固定し、蛍光顕微鏡を用いてCRPのDNA上の運動を観察した。標的配列に対して選択的な結合は見られず、DNA全体に多くのCRP分子が動かずに吸着していた。標的を含まないDNAを用いた実験で観察を行ったところ、多くのCRP分子はDNA上で動かなかったものの、一部の分子がDNA上を一次元的に動く様子が観察された。このとき、動かなかった分子の蛍光強度は動いた分子の蛍光強度よりも強かった。そのため、凝集したCRPがDNA上を運動しなかったと考えた。特に、1nM以上のCRPを添加した際に、CRPによるDNAの凝集が頻繁に観察された。そこで、0.1~0.3nMのCRP濃度で一分子観察を行ったところ、一部のCRPがDNA上を一次元的に運動した。しかし、帰国後、共同研究先の研究者の方に試料の純度を確認していただいたところ、使用したCRPの約半分は凝集していたことが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、共同研究先のカリフォルニア大学ロサンゼルス校に渡航し、CRPの一分子観察を行うことはできた。CRPと標的を含むDNAは共同研究先の方から作製していただいた。しかし、作製したCRPに約半分の凝集体が含まれていたため、CRPのDNA上の一次元スライディングはそれほど観察されなかった。また、当初はCRPがリガンドの結合によって標的認識確率を制御すると考えていた。しかし、他の文献を読むにつれて、リガンドの有無によってCRPの構造が変化することで、そもそもDNAとの非特異的な結合の強さが変化するのではないかと考えた。具体的には、リガンドが結合していないCRPはDNAと結合しにくいと考察される。以上より、本研究課題はやや遅れていると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初めに、共同研究先から凝集体を取り除いたCRPをいただき、一分子蛍光顕微鏡を用いてCRPと標的配列との結合を観察する。一分子観察の結果を解析し、CRPの標的認識確率を求める。リガンドであるcAMPがない状態での観察ができず、標的認識確率の制御という仮説の検証がCRPにおいて困難な場合は、CRPの一次元ダイナミクスを主に検証する。また、ヒストンなどの他のタンパク質の標的認識確率を求めることで、標的認識確率を決める要因を推察する方針に変更する。
|