2017 Fiscal Year Annual Research Report
超原子として見た金属クラスターの化学反応性に関する研究
Project/Area Number |
17J04868
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村松 悟 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 超原子 / 金原子 / 酸化的付加 / 炭素-炭素結合形成反応 / 質量分析 / マトリックス単離赤外分光 / 反応経路探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、超原子軌道1Sに2個の電子が収容された閉殻電子配置を持つ金原子負イオン(Au(-))に着目し、ヨウ化メチル(CH3I)に対する求核的な酸化的付加反応によってC-I結合を活性化して[CH3-Au-I](-)を生成することを見出してきた(J. Phys. Chem. A 2016, 120, 957.)。本年度は、開殻電子構造を持つ中性金原子(Au)とCH3Iの反応を調べた。固体ネオンマトリックス中にこれらの化学種を孤立させて反応を促し、フーリエ変換赤外分光によって生成物の同定を行った。酸化的付加体[CH3-Au-I]に加えて、2分子のCH3IがAuに解離吸着した新規生成物[(CH3)2-Au-I2]を検出・同定した。Global reaction route mapping反応経路探索計算に基づき、これらの形成には、試料生成中のレーザー蒸発過程で生成した励起状態のAuが関与しているものと結論した。また、[(CH3)2-Au-I2]に可視光(波長 > 400 nm)を照射することで、エタン(C2H6)の還元的脱離が進行することが明らかとなった。すなわち、Au原子上で、光照射によってCH3Iのホモカップリングが誘起されることを見出した。これらの結果は、J. Phys. Chem. A誌にて報告済みである。 現在は、開殻超原子である金2量体負イオン(Au2(-))を対象に、CH3Iとの反応性を調べている。閉殻超原子であるAu(-)とは異なる反応性を示す結果が示唆されており、今後より詳細な検討を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中国のグループと共同研究を進める機会に恵まれ、当初は計画していなかった中性種の反応性を調べることに成功した。特に、昨年までの質量分析に基づく実験手法では検出が困難であった中性生成物を同定することによって、金原子がヨウ化メチルのホモカップリングを促進することを明らかにし、金原子自体が新たな触媒としてのポテンシャルを有することを見出した。この共同研究は、今年度に進めたものであるが、すでにJ. Phys. Chem. A誌にて成果を報告している。以上のことから、当初の計画以上に進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後さらに超原子の化学を発展させていくためには、現有装置で生成可能な貨幣金属クラスターのサイズ領域を拡げることが不可欠である。そのために、装置の改良や条件の最適化、新たな生成法の検討に取り組む。その後、様々なサイズのクラスターに対して、小分子との反応性調査を進めていく予定である。
|
Research Products
(8 results)