2018 Fiscal Year Annual Research Report
ダスト存在下における大質量星からの輻射フィードバック
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17J04872
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
一色 翔平 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ブラックホール / 輻射輸送 / ダスト / 数値計算 / 大質量星 / フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
採用第1年度から引き続き、ダスト・ガス間の速度差を考慮したブラックホールへの降着過程の数値計算を行なった。採用第1年度では、ダスト・ガス間の速度差を考慮した場合は、しなかった場合と比較して、ブラックホールへの降着率が大きくなることを報告した。採用第2年度にて新たに得られた成果は以下である。 1. パラメータ (初期条件のガス密度、ダスト・ガス質量比、輻射効率) ごとに、ダスト・ガス間の速度差を考慮したことによるブラックホールへの質量降着率の増加率 (速度差を考慮したことで、しなかった場合と比較してどれだけ降着率が増加したかの率) が大きく異なる理由の解明 2. ブラックホール周辺のダスト分布がパラメータごとに大きく異なる理由の解明 3. ダスト・ガス間の速度差を考慮した場合、ブラックホール周辺から10 micron 付近の高温ダスト由来の赤外線のSpectral Energy Distribution (SED)が最大三桁程度落ちることの発見・原因の解明 特に3については、今回得られた数値計算の結果は、Jiang et al. (2010) のような、quasarの観測において、高温ダストからの赤外線再放射を検出できなかった事の理論的な説明ができる可能性がある。こうした高温ダストからの赤外線量が少なくなる理由としては以下簡単に記述する。ブラックホールに近いほどダストは受ける輻射が強くなることでダスト温度は高くなる傾向にある。そして、ダスト・ガス間の速度差を考慮することで、ブラックホールに近いほどやはりダストに加わる輻射圧が強いため、ブラックホール近傍の高温ダストが取り除かれる。これにより、もはや高温のダストの量が少なくなるので、高温ダスト由来の赤外線量が少なくなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. ダスト・ガス間の速度差を考慮したブラックホールへの降着過程 研究実績の概要で述べたように、ブラックホールへの降着過程の研究に関しては、現在結果をまとめて論文にしている最中である。一部数値計算のプログラムコードに誤りがあり、再計算を行なっているが、数値計算の結果について訂正前と大きな差はなく、これまでの議論に影響しないことは確認している。これにより、研究の進捗に大きな影響はないと判断した。故に、ブラックホールの降着過程の研究については、概ね順調に進展しているとした。 2. 光電離・輻射圧・photoelectric grain heatingの銀河形成に与える影響 今後流体の計算についてはGIZMO (Hopkins 2015) を、輻射輸送についてはM1 クロージャー法を使い、光電離・輻射圧・photoelectric grain heatingの矮小銀河への影響を見積もる数値計算を採用第3年度から開始する予定である。現状としては、プログラムコードが意図通り動いているかのテスト計算や、大型計算機で使用するためにスケーリングを測定し、採用第3年度目の4月から国立天文台のXC50を使用する許可を得た状況にある。コードの実装状況については、特に本研究で最も重要な輻射輸送に関しては、すでにGIZMOに実装されているので、今後もそちらを使用し、計算・研究を行う。 計算機の許可が得られた状況にあること、また使用する計算コードも一部物理過程の追加を除き、実装が完了している状態にあるので、 光電離・輻射圧・photoelectric grain heatingの銀河形成に与える影響の研究について、概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ダスト・ガス間の速度差を考慮したブラックホールへの降着過程 再計算が完了次第、結果を論文にまとめて投稿する。 2. 光電離・輻射圧・photoelectric grain heatingの銀河形成に与える影響 近年の研究で大質量星からの輻射の影響について、光電離、輻射圧だけでなく、photoelectric grain heatingの影響も大きいということが報告されたため、photoelectric grain heatingにも特に注目して研究を行う。そのために、主にphotoelectric grain heatingの影響を考慮する場合としない場合で、銀河形成の様子がどう変化するのかを比較する。 実際の数値計算については、まずひとつのガス粒子が1000太陽質量程度の低resolution の計算を行う。これにより得られたphotoelectric grain heatingの影響を確認する。加えて、目標とする、おおよそ分子雲が分解可能な100太陽質量程度のmass resolution を用いた計算が現実的な時間で終わるのか見積もる。この時、M1 クロージャーを用いて計算する性質上、光の伝搬速度が計算のタイムステップの大きさに大きな制限をかけることが予想される。故に、計算のタイムステップや計算結果への影響に注目しながら、適当な光の伝搬速度を用いる。少なくとも、photoelectric grain heatingの影響を考慮する場合としない場合の両方の計算結果を半年で得られるmass resolution や光の伝搬速度を設定し計算を行う。 数値計算を行う計算機については、進捗状況にも記述したように、国立天文台のXC50を使用する。
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