2017 Fiscal Year Annual Research Report
レアメタルの高度分離のための反応界面設計と新規膜分離プロセスへの展開
Project/Area Number |
17J04900
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 航 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | レアメタル / 膜分離 / 新規抽出剤 / 膜安定性 / スカンジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先端産業に不可欠であり、近年、需要が急激に増大している“レアメタル”の高効率分離法を開発することを目的としている。そのために、貴金属や希土類金属など、いくつかのレアメタルをモデルに、高選択的な抽出試薬を開発し、液液抽出システムおよびその官能基の配向性を記憶させた高度反応界面を有する分離膜の創成にまで発展させる。これまで分離が難しかったレアメタルの分離回収を可能にし、未利用資源の有効利用に繋げるものである。
本年度は、分離対象としてレアメタルの一種であり、近年需要が増加しているスカンジウム(Sc)に着目した。昨年度までの検討により、当研究室で開発されたアミドとアミノ酸を配位基とする新規アミド酸型抽出剤D2EHAGおよびD2EHAFを用いると、他の希土類金属からScを選択的かつ高効率に抽出分離することが明らかになっている。これらの新規アミド酸型抽出剤を用いて、高分子膜(PIM)を調製し、環境調和型の膜分離プロセスに展開した。具体的には、アミド酸型抽出剤を疎水性ポリマー鎖間に固定化し、Scを選択的に分離する固体膜を調製した。
調製した膜のSc分離特性を評価した結果、D2EHAGおよびD2EHAFを導入したPIMは、Scを供給相から回収相に定量的に輸送した。その際、他の希土類金属の回収率は1%以下であり、Scの高選択な膜分離に成功した。さらにD2EHAGおよびD2EHAFを導入したPIMの安定性を比較することで、キャリアの分子構造内のフェニル基の有無が膜の安定性・再利用性に与える影響について検討した。その結果、フェニル基を持たないD2EHAGを導入したPIMを用いた場合、抽出操作を繰り返すにつれて抽出性能の著しい劣化が確認されたが、フェニル基を有するD2EHAFを導入したPIMを用いた場合、5回の抽出サイクルにおいて性能の変化はほとんどなく、全体的に安定した抽出性能を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、開発したアミド酸型抽出剤を高分子膜に導入し、分離膜を調製した。その結果、希土類金属の中でも最も高価なスカンジウム(Sc)の選択的膜分離に成功した。さらに、合成したフェニル基を導入した新規キャリアがPIMの安定性向上に有効であることを明らかにした。当初の予想以上の進展はないが、期待通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で、種々の貴金属・レアメタルの膜透過および分離に成功しているが、その透過機構には不明な点も多い。透過機構が解明できればさらなる膜機能の向上につながり、高選択性分離膜の設計に大いに役立つと予想される。そこで本年度はポリマー包含膜(PIM)を用いた金属の膜透過速度を様々な条件下(膜組成、温度、pH、抽出剤濃度など)で測定し、速度解析を行い、得られた知見を基にPIMによる金属イオンの膜透過機構の解明を目指す。また、金属とキャリアの化学量論比や反応の律速段階の解明だけでなく、より詳細に、キャリアがPIM内で動き回っているのか(可動キャリア膜)、金属イオンのホッピング移動により透過が起きているのか(固定キャリア膜)どうかについても詳細に解析していく計画である。
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Research Products
(10 results)