2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J04913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 聡史 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ドイツ現代史 / 68年運動 / 西ドイツ / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1960年代の全世界的な抗議運動、すなわち68年運動の、特に学生運動の経験が、1970年代の若者を主体とした運動にどのような影響を及ぼしたのかに注目するものである。分析の視角として、68年運動以後の運動の形態を2つの概念、および「ポスト革命的理想主義」、「地方政治化/コミューン化」を用いて説明するものである。 2018年度の主な研究実績は、上述の概念を用いた研究の展望を開いたことである。これらの概念は、以下の2つの内容を意味する。 「ポスト革命的理想主義」は、当時の若者たちが、68年運動の挫折によって革命を伴う社会の急激な改革が不可能であることを自覚したのちに、革命によらない社会変革を求めつつも、実際には非常に急進社会主義的な社会のイメージを理想として保持し続けていたことを意味する。 「地方政治化/コミューン化」は、そうした急進的な思想を実現するために、彼らは自らの政治実践の場を「kommunal」(独語:地域的な・コミューンの)な次元へと移行させたことである。 この2つの概念から説明できる運動を行うことで、彼らは68年運動の挫折を経ても、完全な政治的アパシーを持つことなく、運動を継続できたのである。 この概念を検討するために、具体的にはヘッセン州南部と西ベルリンの運動に注目した。ユーゾーについてはヘッセン南部支部、キンダーラーデンについては西ベルリンで主に社会主義的な教育を未就学児に行おうとした人々である。これまでにユーゾーについては、博士論文の記述をほぼ完了している。そこでは彼らは、自らの社会主義イデオロギー的な政治を進める場所として、地方政治を再発見した。彼らは非常にイデオロギー的な信条を、当時のフランクフルト・アム・マインで問題となっていた都市再開発反対運動を通じて、現実的なものに変換し、自らの主張を比較的効果的に実現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度前半は、2017年度に引き続き、ドイツのマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクに滞在し、第一哲学学部歴史学科のマンフレート・ヘットリング教授とパトリック・ヴァーグナー教授から指導を受けた。さらに7月および8月には、ベルリン自由大学付属文書館、フライブルクの社会運動文書館、ボンのフリードリヒ・エーベルト財団付属文書館にて史料調査を行い、一次史料を収集した。 さらに5月には広島大学で開かれた「第68回日本西洋史学会」において、10月にはソウルの中央大学校で開催された「第3回DAAD東アジアセンター会議」において、研究報告を行った。「日本西洋史学会」においては、研究の前提となる「1968年」の学生運動について活発な議論を交わすことができた。「DAAD東アジアセンター会議」においては、現在取り組んでいるユーゾーの70年代初頭の動向についてドイツ人研究者と議論することができた。 12月には、東京大学にて博士論文リサーチ・コロキアムを開催し、研究の方向性について指導教官から同意を得ることができ、1月からは実際に執筆を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策として、まず9月までに現在取り組んでいる博士論文の初稿を完成させる。それと並行して6月末までにこれまでに書き上げたユーゾーについての記述を投稿論文形式に編集し、雑誌『西洋史学』に投稿する。その後、9月から10月にかけて、博士論文ファイナル・コロキアムを開催し、指導教官からのコメントを得て、それを元に再度博士論文を推敲する。並行して12月までに研究会にて博士論文の内容を報告し、より広く助言を募る。1月までに論文を再提出し、最終審査を経て博士論文を完成させる。
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