2017 Fiscal Year Annual Research Report
Formation of ripple graphene with bandgap using microwave annealing
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17J04947
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 觀洙 東北大学, 電気通信研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ波熱処理 / リップル・グラフェン / バンドギャップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標はマイクロ波熱処理を利用してバンドギャップを持つリップル・グラフェンの形成技術開発することにある。これを達成するため本年度はSiC基板上のエピタキシャルグラフェン(EG)に対するマイクロ波熱処理技術の開発して、マイクロ波熱処理を施したEGの物理的、化学的、電気的特性の評価を行った。その結果、マイクロ波熱処理後では、界面層に由来する界面層のスポットが低速電子線回折(LEED)像において消失しており、透過電子顕微鏡(TEM)像でも界面層とSiC基板間の距離が0.27 nmから0.48 nmに増加することを見出した。またラマン分光では、マイクロ波熱処理後にグラフェンの圧縮ひずみの低下に関係するG'-bandの低波数シフトが観察された。これらの結果は、マイクロ波熱処理によりグラフェンとSiCの間の強いσ-結合が結合力の弱いvan der Walls結合に変化し、界面層の消失した擬自立化グラフェン(Quasi-free-standing Epitaxial Graphene:QFSEG)が形成されたことを示す。界面層とSiCの間の化学的特性の変化を観察するためにX線光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)分析を行ったところ、マイクロ波熱処理以後に界面層と関係付けられるピークが消失し、新たにSiC表面酸化を意味するピークが出現した。以上の結果から、大気圧下で行われたマイクロ波熱処理によってSiC表面が酸化され、その結果、界面層がSiC基板から分離されたことが分かる。ただし同処理によってドーピング濃度が増大し、これに伴う不純物散乱の増加のためにキャリア移動度は低下した。今後、この困難を克服するため、雰囲気制御を含む種々のマイクロ波熱処理条件の最適化が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由)本研究はマイクロ波熱処理を用いてバンドギャップを有するリップル・グラフェンを形成する技術を開発することを最終目的とし、本年度は(1) SiC基板の上のエピグラフェン(EG)に対するマイクロ波熱処理技術の開発、(2) マイクロ波熱処理をしたEGの物理的、化学的特性の評価、(3) マイクロ波熱処理をしたEGの電気的特性の評価を行った。その結果、マイクロ波加熱により、SiC基板上EGが化学的に分離され、処理前の単層グラフェンが2層グラフェンへと変化すること、その際にグラフェンへの欠陥導入がないことを、LEED、XTEM、ラマン散乱分光により明瞭に示すことができた。この成果は大きな成果であり、5年 Impact Factor 6.834のCarbon誌にこの成果が掲載されたことに示されるようにすでに高い評価を受けている。 一方、界面層の消失機構は当初期待していた熱膨張係数の違いによる化学結合の開裂ではなく、SiC基板表面の酸化によるものであることが明らかとなった。また、キャリア移動度は処理前の1500から650 cm2/Vs へとむしろ低下した。この原因としては、SiC酸化によりエピグラフェンの伝導型が処理前のn型からp型に変化し、キャリア濃度が3倍に増加したことが挙げられる。キャリア濃度の増加によって不純物散乱が増大し、移動度が低下したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の研究を通じて、マイクロ波熱処理によりギャップ形成と関係付けられるグラフェンひずみの低減可能を確認した。しかし大気中マイクロ波熱処理による電気的特性改善の限界が明らかになった。このような問題点を解決して、最終目標を達成するため、今後、以下の研究を行う。 まず、マイクロ波熱処理雰囲気をこれまでの大気圧からH2またはArなどの非酸化性雰囲気に変化させ、電気的特性の改善をめざす。その後、QFSEGにマイクロ波熱処理を実施して最適化されたリップル・グラフェンの形成条件を確立する。最終的に最適化された条件で形成されたリップル・グラフェンを利用してトランジスタを製作して電気的特性を評価する。また、上記の研究結果を通じてリップルグラフェン形成機構の熱力学的考察を行う。
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