2017 Fiscal Year Annual Research Report
長大π共役ポルフィリノイドワイヤ・シートの合成および機能発現
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17J04958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊田 良順 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ジピリン錯体 / 分子ワイヤ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はジピリン金属錯体ナノワイヤの合成とその物性調査を行った。単核錯体の研究からジピリン亜鉛錯体は強い蛍光を示すなど興味深い光物性を持つことが知られており、今回は金属イオンとして亜鉛イオンを採用することでジピリンナノワイヤの光機能化を中心に研究を進めた。 分子ワイヤの調製すなわちジピリン金属錯体のポリマー化はジピリン架橋配位子の金属イオンへの配位により進行する。溶液中でこれらの原料を混合することで粉末状の生成物を得た。これを分散媒中で超音波処理し、平滑基板上に塗布することで原子間力顕微鏡観察を行った。観察された像と分子構造計算の結果から、調製した分子ワイヤは分子鎖一本一本に単離できることが確認された。さらに、ジピリン架橋配位子の構造を変化させることでそれに応じた分子ワイヤの太さの違いを大気下で観察するなど、分子デザインによりナノワイヤの構造を調整できることを見出している。 また、これらの分子構造に関する情報と紫外可視吸光分析や蛍光測定などの光物性測定結果を複合的に考察し、分子ワイヤの構造によって光機能性をコントロールできることを明らかにした。例えば、キラリティを組み込んだナノワイヤを合成することで円偏光特性の強度が単核錯体に比べて増強することを報告した。さらに、別の分子構造を採用したジピリンナノワイヤについては、分子ワイヤの発光効率を向上させることに成功している。加えて、光照射によって生成した励起子が分子鎖中を移動していることを明らかにした。この現象は一次元的な構造異方性を持つ分子ワイヤが光エネルギーを伝達することを示しており、光導波路としての利用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ジピリン金属錯体ナノワイヤはポルフィリノイドワイヤ前駆体としての活用が期待されるだけでなく、それ自体の構造および光物性が大変興味深いことを実証した。 超音波処理によって単分子鎖に剥離できるという配位高分子としては稀有な特徴があるとともにボトムアップ構造体としてのデザイン性も兼ね揃えることが利点として挙げられ、今年度は有機配位子の構造を設計することで単分子ナノワイヤの円偏光特性の発現や蛍光効率の向上を達成できた。これらの成果の一部は国際学術ジャーナルにも掲載されており、本研究が当該領域を大きく発展させたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で明らかとなったジピリン錯体ワイヤの光物性をさらに追究し、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの発展に寄与する。特に、分子鎖内光エネルギー移動挙動を分光測定や理論計算などを通して多角的に調査していく。それらの知見を得た後、変換反応を適用できる新たなジピリン配位子の合成を行い、機能性ポルフィリノイドワイヤの合成を目指す。
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Research Products
(8 results)