2018 Fiscal Year Annual Research Report
自家抗体をがん治療に起用するペプチド性中分子の開発
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17J05032
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 光一 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | chemical biology |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度までの研究成果として、ヒトIgGのFc領域に強固に結合するペプチド (FcIII-4C) 及び葉酸を共有結合した分子 (以下FcARM2と呼称) により葉酸受容体 (FR) 陽性がん細胞へ特異的にIgGを集積させることに成功した。 H30年度においては、FcARM2を介してがん細胞に集積した抗体が、明瞭な抗体依存性細胞傷害 (ADCC) を誘起することを株化細胞を用いた実験で示した。具体的には、FRを過剰発現したヒト卵巣癌由来IGROV-1細胞に対し、ナチュラルキラー (NK) 細胞様細胞株であるKHYG-1、anti-CD20 IgG1抗体及びFcARM2を加えることでADCCによるIGROV-1細胞の傷害が起こることを確かめた。また、そのADCC活性は過剰量の葉酸を添加することで完全に消失した。anti-CD20抗体はそれ単独ではIGROV-1細胞に結合せず、同細胞に対するADCC活性を示さなかった。従って以上の結果から、FcARM2を介してがん細胞に対して抗体を集積させれば、ADCCを誘起できると示唆された。また、パパイン処理によって得たanti-CD20 抗体のFc断片を用いた際も同様にADCCは誘起された。この結果は、抗体Fab領域による抗原への結合は必ずしも抗体のADCC活性を誘導する上で必須でないことを示唆する。加えて、アフィニティクロマトグラフィ精製されたヒト血清由来IgG, または免疫グロブリン製剤をFcARM2と共添加した場合にも、anti-CD20 IgG1抗体を用いた場合と同等のADCC活性が確認された。この結果は、FcARM2単体をがん患者に投与すると、FcARM2が血液中のヒトIgGとin situで相互作用し、がん細胞を傷害しうると示唆している。以上の結果を受け、次年度に担がんマウスモデルを用いた治療実験を実施する目処がたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、本戦略におけるIgGサブクラスの違いと抗がん活性 (ADCCなど) の違いを評価する予定であった。実際には、その代わりとして人血清由来の抗体、もしくはIgG抗体のFcフラグメントを用い、精製されたIgG1を用いた場合と同様にADCC活性が得られると明らかにすることができた。また、今年度の計画として予定していた前立腺特異的膜抗原 (PSMA)を標的としたFc-ARMに関しても、がん細胞への抗体集積能及びADCC活性について一連の評価を終えた。 H30年度での実施を予定していた動物実験はようやく開始したところではあるが、総じて予定通りに研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね予定通りに研究が進展している。従って当初の計画通り、本年度は以下の通りに研究を進めていく。 ①担がんマウスモデルにおける評価 (治療効果, がん非集積性抗体とFc-ARMの共投与に伴う抗体のがん集積量の変化, Fc-ARMと共投与した抗体の体内分布など). ②Fc-ARMによりがん細胞に集積した抗体の、ADCC以外の抗がん活性の評価 (抗体依存性細胞貪食 (ADCP) 及び補体依存性細胞障害 (CDC)) 以上を通し、中分子医薬としてのFc-ARMの有用性を明らかにし、国際誌にて発表する。
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