2017 Fiscal Year Annual Research Report
Ultracold highly charged ion generation and spectroscopy toward time variation detection of fundamental physical constant
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17J05087
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
木村 直樹 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 冷却多価イオン生成装置開発 / イオントラップ / 電子ビーム源 / 超伝導コイル / 冷凍チャンバー / 可視分光 / バリウム多価イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は極低温多価イオン生成装置の開発を中心に研究を進めた。多価イオン生成実験はまだ開始できていないが、新規装置開発は着実に進行しており、新たな知見も多くつみあがっている。2017年度中に達成した開発項目を以下に記す。 まず、装置の基幹部品を設置する小型の封止冷凍チャンバーを製作した。本チャンバーを断熱用真空槽内部の4Kクライオヘッド上に設置して冷却し、10^-8 Pa以下の超高真空環境となることを確認した。 また、多価イオン生成用の特殊な電子ビーム源を製作し、出力試験を行った。「電子ビーム源に熱励起型の陰極を使用できない」「トラップ軸上に陰極を配置できない」といった制約条件を解決するため、針葉樹型ナノ構造を表面に持つ電解放出型の穴あき冷陰極を採用し、電子ビームの出力が取れるよう電子レンズ系も専用設計した。製作後の出力試験の結果、100μA以上のビーム強度が得られ、10秒以上の十分長い時間のトラップ寿命が保てれば、目的の多価イオンが生成可能なことを計算で示した。加えて、電子ビーム収束用の超伝導コイルを開発し、冷凍試験を実施した。冷凍試験では、室温から10Kまでコイルの冷却を行い、抵抗が180Ωから0.2Ωまで減少することを確認した。 一方で、分光対象となる多価イオンの調査・選定作業も同時に進めている。多価イオンの光学遷移と精密分光実験の実現性を広範囲にわたって調査・検討した結果、最初のターゲットとしてBa7+の基底状態の微細構造間遷移を選定した。本遷移の遷移周波数を把握するため、共同研究先の電気通信大学の装置『小型電子ビームイオントラップ』を用いて発光線を直接観測する実験を試み、目的の遷移の同定と周波数測定に成功した。今後、測定した周波数を基に分光用レーザーを製作する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の目標であった多価イオン生成及び多価イオンの冷媒となるBe+イオンのレーザー冷却実験には至っておらず、全体の進捗状況としてはやや遅れている。本研究では前例のない冷却多価イオン生成装置を開発しており、前年度中の開発過程において想定外の課題が多数発生していることが主な原因である。 一方で、分光対象となる多価イオンを選定し、その遷移周波数測定を測定するなど、当初想定していなかった成果も上がってきている。特に今回提案したターゲットであるBa7+イオンは従来の時計遷移分光に比べ、必要なレーザーの本数が1本のみと少なく、その上、遷移周波数も電通大の既存装置を用いた分光実験によって正確に決定出来ている。これらの成果は、今後の研究のスピードアップに寄与すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、理化学研究所内の実験室で極低温多価イオン生成のための装置開発に従事する。具体的には、昨年度製作した電子ビーム源と超伝導コイルを安定的に稼動し、多価イオン生成の実験が出来るよう冷凍機及び周辺の環境を整備していく。多価イオン生成試験はBa7+をターゲットとし、まずはチャンネルトロンを用いてイオンの生成・検出実験を行う。 加えて、生成した多価イオン及びBe+イオンを捕捉するための線形四重極ポールトラップの運転試験も開始する。共同研究先の理化学研究所香取量子計測研究室で開発中の313nmレーザーを用いてBe+イオンのレーザー冷却実験を行い、安定的なクーロン結晶生成条件を確立後、Ba7+を共同冷却する実験に移行する。 一方で、Ba7+以外のターゲットの調査も同時に進め、より良いターゲットが見つかった場合、遷移周波数測定実験を計画する。
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Research Products
(7 results)