2017 Fiscal Year Annual Research Report
軽石の気泡構造に記録されたカルデラ噴火機構を探る:物理実験と地質調査の双方向から
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17J05094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 正俊 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 気泡変形 / Tube Pumice / レオロジー / 噴出物解析 / カルデラ噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルデラ形成を伴う破局的な噴火では,Tube Pumiceと呼ばれる噴出物が多く見つかる.Tube Pumiceとは軽石の一種であり,一方向に伸長した気泡から構成される.このような特徴的な気泡構造には,カルデラ噴火のダイナミクスに関する記録が残されている可能性があり,その形成機構の解明は重要である.本研究は3つのパートから成り立つ.1,アナログ実験による気泡変形モデルの構築.2,Tube Pumiceに関する地質調査.3,変形モデルと地質調査結果の融合.本年度は,主に1のパートに取り組み,2のパートも部分的に取り組んだ. 1,気泡の伸長構造が急減圧によって形成される可能性を検討するため,他大学の工学部と共同して,衝撃波管を用いた予備実験を行った.しかし,期待した変形は見られず,課題が残った.また,レオメータを用いた気泡の変形実験も同時に行った.この実験を元にして,液体中の液滴の変形を扱った先行研究の半解析的なモデルを,液体中の気泡に応用できるように調整した.このプログラムにより,気泡変形の時間変化を計算することが可能となった.次に,広く使われている一次元火道流の計算ソフトによる流れ場と,気泡変形モデルを組み合わせて,火山噴出物に含まれる気泡の変形度が記憶している物理量を解析した.その結果,噴出物の気泡の変形度は,噴出の最終段階における過渡的な歪速度の増加の影響を強く受けることが分かり,これまで考えられていた気泡変形度の定常解に基づく解釈とは異なる結果を示した.この研究成果は,国際誌に投稿中である. 2,当初の予定を変更し,北海道の支笏火山ではなく,New ZealandのTaupo火山で地質調査を開始した.最新の火砕流堆積物中にTube Pumiceがあることを確認し,偏光顕微鏡を用いてその気泡構造を観察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,マグマの模擬材料(ポリウレタンフォーム)を使用して,急減圧実験を行う予定であったが,昨年度の予備実験では期待した結果を得られなかった.その代わり,レオメータを用いた気泡の変形実験から,既存の液滴変形モデルを改良することに成功し,マグマ中の気泡変形を計算できるようになった.当初の方法とは異なるものの,マグマ中の気泡変形モデルを構築することには成功したため,本来の目的は達成したと考える.また,実際の火山において,Tube Pumiceを観察できたので,本研究の課題は概ね順調に進んでいると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,①と②のパートを進める.New ZealandのTaupo火山にて本格的な地質調査を行い,Tube Pumiceの気泡形態に関する定量的なデータを取得する.気泡形態の測定には,X線CT装置を使用する.また,昨年度に開発した気泡変形モデルは,単独気泡が無限に広がる流体中に存在することを仮定している.しかしながら,実際のマグマでは有限の流体中に複数の気泡が存在するため,気泡同士の相互作用や合体現象が発生すると考えられている.この現象が気泡変形に与える影響を調べるため,せん断変形下にある複数気泡のその場観察実験を行う予定である.
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