2017 Fiscal Year Annual Research Report
前頭前野を中心とする哺乳類大脳皮質の形成過程ならびにその進化の解明
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17J05365
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉永 怜史 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 神経細胞移動 / 大脳皮質 / 神経発生 / 回路形成 / 領野分化 / フラッシュ・タッグ |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質は哺乳類で極めて発達したが、その8割をしめるともいわれる興奮性の神経細胞は、脳の深部で生まれて表層に向かって適切に移動し、整然と整列することで精緻な6層構造を形成する。こうしてヒトは高次な脳機能を発揮できる。今年度は、神経回路形成の最初期である神経細胞移動に異なる脳領域で違いがあるかどうかを調べた。まず、異なる脳領域の神経細胞移動を同一脳で比較する方法として、最近主に海外のリボ核酸・シークエンスで使用され始めたフラッシュ・タッグ法を若干改変して神経細胞移動をトレースすることを試みた。この方法では、蛍光色素を脳室に注入し、蛍光色素が脳脊髄液の流れでウォッシュ・アウトされるまでの短い間に脳室面というところで分裂した細胞内でのみ蛍光色素が長時間保持されるため、ある時刻に誕生した神経細胞を特異的にラベルできた。本法を駆使し、胎生期の様々な時期で蛍光色素を注入し、経時的に固定することで神経細胞移動のプロフィールを詳細に解析した。その結果、特定の時期に誕生した細胞で明瞭な移動の領域差が見られることを見いだした。さらに、ライブ・イメージングによる解析を行い、こうした移動の領域差が、移動中のどの段階で生まれてきうるかが浮き彫りになった。これは大脳皮質発生において、興奮性神経細胞が脳の深部で誕生し脳表面に向かって(島や梨状葉など著しく外側・腹側の領域を除いて)どの領野でも概ね同じように移動していくという、従来研究者に共有されていたスキームを覆すものである。また皮質形成の最初期に誕生する神経細胞(哺乳類特異的に出現したとも考えられており、中でもヒトで極めて発達する)の興味深い振る舞いも見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に、フラッシュ・タッグ法に着目し、ニューロン移動プロフィールの解析を精力的に行った。この方法は簡便に同一脳で異なる領域の神経細胞移動を可視化できることが明らかとなり、効率的に神経細胞移動の解析が進められた。これを用いたニューロン移動の包括的な解析の結果、従来の理解と異なり、細胞移動に時期依存的な領域差が存在することを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
フラッシュ・タッグ法は移動ニューロンから見た細胞外環境がどのように形成され、またニューロン移動へどのような影響を与えるかを簡便に解析することを可能にするツールと所見を提供した。今後は、これを活用しつつ、他の神経解剖学的手法・子宮内電気穿孔法をあわせて利用することでこのような領域毎の違いがどのように形成されるか、また神経回路形成の最初期でのイベントがどのようなものかを解析していく。
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[Journal Article] 覚せい剤使用下での刑事事件における、裁判所の責任能力認定の統計学的解析2018
Author(s)
吉永 怜史, 山本 保天, 池田 和弘, 垣本 隆行, 倉持 智洋, 黒川 駿哉, 小杉 美菜実, 佐野 康徳, 野村 信行, 高橋 希衣, 真鍋 淳, 山市 大輔, 阿部 貴行, 村松 太郎, 三村 將
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Journal Title
司法精神医学
Volume: 13
Pages: 2~10
Peer Reviewed
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