2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J05394
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山村 諒祐 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 希土類化合物 / Pr化合物 / 四極子 / 多極子 / j-j結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
PrPb3の格子非整合なΓ3反強四極子秩序を微視的観点から解明するために、本年度はまず、(i) j-j結合描像に基づいたΓ8軌道縮退ハバードモデル、(ii)クーロン相互作用とスピン軌道相互作用を有限とした3次元7軌道ハバードモデル、の2つのモデルに焦点を当てて解析を行なった。以下にそれぞれの具体的な成果を示す。 (i)まず、Γ8軌道縮退ハバードモデルに平均場近似を適応し、フントエネルギーJと対ホッピング相互作用J'の平面上で多極子秩序相図を描き、Γ3四極子秩序相が現れる領域を同定した。その結果、平均場近似の範囲では、Γ3二重項が結晶場基底状態でない領域でΓ3四極子秩序相が現れ、その秩序ベクトルはフェルミ面のネスティングベクトルに一致することを示した。次に、乱雑位相近似に基づいて多極子感受率を計算し、フントエネルギーJと対ホッピング相互作用J'の平面上で多極子秩序相図を求めた。相図は概ね平均場近似と一致したが、新たにΓ2八極子及びΓ5四極子の秩序ベクトルを同定し、その値がネスティングベクトルと一致しないことを示した。これは、フェルミ面の幾何学的形状に加えて、フェルミ面上の多極子密度分布も重要であることを示しており、格子非整合の四極子秩序の起源が、当初予想していたようなフェルミ面の単純なネスティングによるものではない可能性を指摘している。 (ii)3次元7軌道ハバードモデルに対し、乱雑位相近似に基づいて多極子感受率を計算した。飛び移り積分はσ、π、δ、φの四つを考え、これらの値を変えることにより、フェルミ面構造を変化させ、現れる多極子秩序構造とその秩序ベクトルを同定した。その結果、現実的な相互作用のパラメータ領域で実際に、格子非整合なΓ3四極子秩序が現れることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始当初、格子非整合の四極子秩序の起源は、フェルミ面の単純なネスティングによるものであると予想していたが、実験から推定されたフェルミ面にはそのようなネスティングが存在しないという問題があった。 しかし、Γ8軌道縮退ハバードモデルの乱雑位相近似による解析において、多極子秩序の秩序ベクトルが、必ずしもフェルミ面のネスティングベクトルに一致する必要はないことを示した。また、多軌道系での多極子感受率を求めるスキームを完成させ、3次元7軌道ハバードモデルに適応することにより、現実的な相互作用のパラメータ領域で、格子非整合なΓ3四極子秩序が現れることを示すことができた。これらの研究成果は、国際会議や国内学会等で発表した。 以上から、本研究はおおむね順当に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
j-j結合描像における四極子秩序の理解をさらに深めるために、Γ7-Γ8ハバードモデルを乱雑位相近似で解析する。系の対称性を保つような有効相互作用を取り入れることによって、四極子秩序が現れる要因を明らかにする。また、飛び移り積分を次近接まで考慮することでフェルミ面の構造を変化させ、現れる多極子秩序とその秩序ベクトルにどのような影響を及ぼすのかを調べる。 その後、j-j結合描像での結果を参考にして、飛び移り積分を次近接まで考慮した3次元7軌道ハバードモデルを乱雑位相近似に基づいて解析することにより、本研究課題であるPrPb3における格子非整合なΓ3反強四極子秩序の起源を解明する。
|