2017 Fiscal Year Annual Research Report
高温高圧下における水-メタン系物質の安定性の解明と天王星・海王星の内部構造理解
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17J05467
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
門林 宏和 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 天王星 / 海王星 / ダイヤモンド / メタン / 高温高圧実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,海王星や天王星などの氷惑星内部を想定した条件下で主成分である水-メタン系の高温高圧実験を行い,メタンの融点や分子解離条件を決定し,解離によって生じると考えられるダイヤモンドの存在を実験的に検証することである.氷惑星内部条件での水-メタン系の高温高圧挙動を明らかにし,氷惑星のマントル構造を検討することは,非双極的かつ非軸対称である特異な内部磁場の発現原因を推定する上でも重要である. 本年度は,まずメタンの融解や分子解離への水の影響を調べるため,熱電対による高精度な温度測定が可能な抵抗加熱ダイヤモンドアンビルセルの技術開発を行った.現在までに,本システムを用いた予備的な高温高圧実験により最高1200 Kまでの高温発生に成功している.今後,ヒーターの形状や断熱材の厚み,加熱時の昇温速度を最適化することで,さらなる高温高圧発生も十分に可能であると考えられる.さらに,本年度は炭酸ガスレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用い,水とメタン混合試料の加熱実験も行った.混合試料を試料室へ封入し,加圧後に炭酸ガスレーザーで直接加熱を行なった.その後,試料を室温へ急冷し,急冷した試料を放射光を用いたX線回折,及びラマン分光により観察し,未加熱部と加熱部の比較を行なった.また,脱圧回収後に高分解能電子顕微鏡により回収試料の観察も行なった.これらの実験により,水-メタン系でのダイヤモンドの生成条件がメタン単成分で報告されている条件よりも有意に低温側へシフトすることを明らかにするとともに,氷惑星のマントル最上部においてもダイヤモンドの生成が起こりうる可能性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,氷惑星内部を想定した条件下でのメタンの融点や分子解離条件の解明に必要な抵抗加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験システムの立ち上げを進める計画であった.現在までに本システムを用いた高温高圧実験により,当初の目標温度に近い1200 Kまでの高温発生に成功している.さらに,炭酸ガスレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用い,水とメタン混合試料の予備的な加熱実験を行い,水-メタン系でのダイヤモンドの生成条件がメタン単成分で報告されている条件よりも有意に低温側へシフトすることを明らかにした.上述の通り本年度は,抵抗加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた実験システムの立ち上げに加えて,炭酸ガスレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた予備的な実験によりダイヤモンドの生成条件が水の影響により大きく変化する可能性を示したため,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実験に必要なシステムの立ち上げの大部分が完了できたため,今後は抵抗加熱ダイヤモンドアンビルセルのヒーターの形状や断熱材の厚み,加熱時の昇温速度を最適化することで,さらなる高温高圧発生を実現し,本システムを用いて水-メタン系の高温高圧実験を行い,メタンの融点や分子解離条件を決定する.さらに,炭酸ガスレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用い,メタンの分子解離によって生じると考えられるダイヤモンドの生成条件を実験的に検証する.そして,これら一連の結果を基に氷惑星の内部構造のモデル化を行い,天王星と海王星の特異的な内部磁場の発現の原因を検討する.
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