2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J05509
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
真砂 全宏 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | スピン三重項超伝導 / 強磁性超伝導体 / ウラン系化合物 / 高圧実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の「研究計画」の通り,強磁性超伝導体UCoGeに圧力を印加して強磁性を抑制することに成功し,その領域でも発現する超伝導状態について,低温で微視的な測定を行うことができた.圧力印加は専門的な知識,技術を要し,当初は幾度となく加圧に失敗したが,試行錯誤の末に1 GPa(約1万気圧)の圧力に到達することができた.その環境で核磁気共鳴・核四重極共鳴測定を行った結果,(1) 高圧の超伝導相では(常圧の強磁性相とは異なり)試料全体が超伝導転移していること,(2) この系の超伝導に欠かせないとされる「強磁性揺らぎ」が高圧下で発達し,実際に超伝導が増強されている,(3) UCoGeの高圧の超伝導相がスピン三重項超伝導である可能性が高いことが明らかとなった.特に(2), (3)は本研究の最大の研究目的の1つであり,超伝導体の中でも数少ないスピン三重項対の実現が明らかとなった意義は大きい.今後はスピン三重項対に特有の現象を(もしあれば)明らかにすることを目指す.また,以上の成果を論文として公表することに注力する. 本研究では上記の研究に関連して,UCoGeの常圧,常磁性状態における微視的かつ詳細な帯磁率及び強磁性揺らぎの測定を行った.その結果,これらの起源がウラン原子の5f電子に由来することが裏付けられた.さらに重要な点として,帯磁率の大きさが強磁性磁気モーメントに直交するa, b軸でもかなり異なることが明らかとなった.この異方性は今年度に行う予定である,高磁場に対する強磁性の応答の異方性に関連していると考えられる.この成果はすでに論文として公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究計画」に記載されている事項はおおむね実施され,「研究目的」の1つである超伝導の対称性の解明が達成されつつある.加えて平成30年度に行う予定である高磁場の実験の目的に密接に関連する「帯磁率の異方性」について知見を得ることができたため,当初の計画以上に研究が進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
圧力の実験は継続し,より高圧の環境でも測定を行って,スピン三重項対であることを示すさらなる証拠を得る.また,強磁性揺らぎが圧力でどう変化するのかを明らかにする.それに並行して,「研究計画」の通り,常圧においてUCoGeのa, b軸方向に磁場を印加して,強磁性状態及び強磁性揺らぎの変化を明らかにし,強磁性揺らぎが超伝導に果たす役割をより深く理科する.
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Research Products
(6 results)