2018 Fiscal Year Annual Research Report
生殖中枢を制御するエストロゲンの正負フィードバックを担う分子メカニズムの解明
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17J05577
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀畑 慶 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 生殖機能制御 / 神経内分泌 / エストロゲンフィードバック / キスペプチンニューロン / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生殖中枢を制御するエストロゲン(E2)の正負フィードバックを担う分子メカニズムの解明である。哺乳類の生殖中枢であるキスペプチンニューロンに着目して、E2によるKiss1発現およびキスペプチン分泌制御における分子メカニズムを解明するため、昨年度は以下の実験を遂行した。 ①Kiss1発現制御候補因子の脳内発現領域の検討およびE2に対する反応性の検討 ヒストン修飾関連タンパク質であるRetinoblastoma-binding protein 7 (Rbbp7)が、ラット視床下部のどの領域に発現するか、またE2濃度により遺伝子発現が変化するかを検討した。その結果、キスペプチンニューロンが存在する前腹側室周囲核(AVPV)および弓状核(ARC)において、Rbbp7 mRNA発現が認められた。さらに、視策上核、室傍核、視床下部腹内側核においても発現が認められた。また、OVX群およびOVX+high E2群間のRbbp7発現分布に差異は認められなかった。 ②キスペプチン分泌制御候補因子の選抜およびキスペプチンニューロンとの共存の検討 キスペプチン分泌におけるエストロゲンの負のフィードバックメカニズムに、synaptosomal nerve-associated protein 25(Snap25)の発現が関与するという仮説を立て、ラットAVPVおよびARCキスペプチンニューロンにおけるSnap25 mRNA発現を組織学的に検討した。その結果、Snap25は、AVPVおよびARCにおいて6-7割のキスペプチンニューロンと共発現していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「生殖中枢を制御するエストロゲンの正負フィードバックを担う分子メカニズムの解明」を目指して精力的に研究に取り組んだ。特に、「キスペプチン分泌制御候補因子の選抜およびキスペプチンニューロンとの共存の検討」において、進展があった。具体的には、弓状核(ARC)および前腹側室周囲核(AVPV)の両神経核に局在する6割以上のKiss1発現細胞において、シナプス小胞と細胞膜の膜融合を引き起こすSNAP-25の遺伝子が発現することを発見した。この結果は、今後、SNAP-25のキスペプチン分泌への関与について、新たな知見を得るものと期待する。また、「Kiss1発現制御候補因子の脳内発現領域の検討およびE2に対する反応性の検討」の課題において、ヒストン修飾関連遺伝子であるRbbp7の雌ラット視床下部におけるmRNA発現領域を明らかにした。現在、Rbbp7のキスペプチンニューロンにおける役割を明らかにするため、RNA干渉法によるRbbp7のノックダウンを計画し、マウス由来のキスペプチンニューロン不死化細胞株(mHypoA-55株)を用いて実験を進めている。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究について、以下2つの推進方策を予定している。 1) Kiss1発現制御候補因子の機能解析 ヒストン修飾タンパク質であるRbbp7がキスペプチンニューロンに発現していることが示されたため、Rbbp7がKiss1発現制御に関与する可能性が高まった。今後は、E2有無条件下のマウス由来のキスペプチンニューロン不死化細胞株(mHypoA-55株)において、RNA干渉法を用いてRbbp7発現をノックダウンし、Kiss1発現変化を検討することで、Kiss1発現制御におけるRbbp7の役割を明らかにする予定である。Rbbp7がKiss1発現を制御すると証明された場合、実際の生殖機能にどれほどの影響を与えるのかを検討するため、ラットを用いて、視床下部におけるRbbp7 mRNAをノックダウンし、生殖機能の指標である血中の黄体形成ホルモン(LH)濃度を測定する予定である。 2) キスペプチン分泌制御因子の探索および機能解析 神経伝達物質の放出に関与するSNAREタンパク質の一つであるSnap25がキスペプチンニューロンに発現していることが示されたため、SNAP25がキスペプチンニューロンにおける分泌活動を担う可能性が高まった。今後は、キスペプチンニューロンにおけるSNAP-25発現がE2により制御されるか否かを明らかにするため、mHypoA-55株にE2を添加し、Snap25 mRNA発現への影響を検討する予定である。さらに、弓状核キスペプチンニューロンにおけるSNAP25発現が実際にキスペプチン分泌に関与するか否かを明らかにするため、ラットにおいて弓状核のSNAP25をノックダウンにより、細胞内におけるキスペプチンの蓄積の有無を免疫組織化学法により検討する予定である。
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Research Products
(3 results)