2017 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ構造上で誘起されるアークプラズマの特性およびナノ構造の損耗に関する研究
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17J05670
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
皇甫 度均 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | アークプラズマ / ナノ構造 / ダイバータ / タングステン / 核融合 / プラズマ材料相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高電場印可による電界電子放出計測装置の製作およびナノ構造の電界電子放出特性の評価:電界電子放出計測装置を製作し、金属材料間、表面のナノ構造形態の違いによる電子放出特性を確認した。また、表面の微細化により電界電子放出が著しく上昇し、比較的低電場でブレークダウンが開始することを明らかにした。 2.高電流アークによるナノ構造金属の損耗評価:ナノ構造上でのアークの点弧確率や平均的持続時間がアーク電流の増加と共に増加することを発見した。アークによる損耗量において、単位時間当たり損耗量はアーク電流に比例するのに対し、単位電荷量当たり損耗量はアーク電流に依存しないことを明らかにした。この結果は、アーク電流の増減にも単一アークスポットの爆発メカニズムに変動がないことを示唆した。一方、単位電荷量当たり損耗量はナノ構造の厚みに依存し、ナノ構造厚みの増加に伴う機械的破壊が損耗量の上昇につながる可能性が示唆された。 3.アーク発生時の電流・電圧特性の周辺プラズマ依存性:アークの電流電圧特性が周辺のプラズマ抵抗を介した電流ループにより決まることを発見した。このことは、周辺プラズマのパラメータによりアークの点弧・持続が影響されることを示唆し、条件によってはアークを防止する可能性を示唆するものである。 4.不純物ガス導入によるnano-tendril bundles(NTBs)の生成:ヘリウムプラズマへ少量の不純物ガス(空気、窒素、ネオン、アルゴン)を混合することにより、直流プラズマでNTBが生成されることを初めて発見した。添加した不純物ガスは核融合炉でダイバータへの熱負荷低減のために用いられるガス種であり、実機の環境に近い割合での生成を確認した。また、NTBの生成のためには一定量以上の質量損失が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた高電場印可装置の作製を完了し、電界電子放出電流を測定し材料・表面状態の違いによるアーク特性の比較まで実施した。また、20 A級のアーク電流実験はまだ実施されていないが、アークの点弧・持続やアークに起因する損耗量の測定、アーク電流やナノ構造厚み依存性まで評価が終了したことは、当初計画以上に研究が進展していると評価できる。さらに、アーク電流・電圧特性が周辺部のプラズマ抵抗に強く依存するという研究成果は、核融合炉において周辺プラズマのパラメータや炉壁の電位を制御することにより、アーク発生を制御できる可能性を示唆するものであり、今後の核融合炉開発に資する重要な知見であると評価できる。 さらに、高周波放電プラズマでしか観測されていなかったnano-tendril bundleという特異なナノ構造が、直流放電プラズマでも生成されることを初めて見出し、nano-tendril bundleの形成機構の新たな議論点を提示した。直流放電プラズマにおけるnano-tendril bundleの形成は、アーク実験の過程で発見されたもので、当初の予想以上に新たな現象が発見されたことである。以上により、現在までの進捗状況は計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高電場印可時のナノ構造の電界電子放出特性およびブレークダウン特性 今までのナノ構造表面上でのアークの点弧には、核融合炉で発生する高エネルギーの間歇的熱負荷を模擬したパルスレーザが用いられてきた。しかし、パルス熱負荷による点弧後におけるアークの持続はその材料の電気・熱特性に大きく依存する。今後の研究では、ナノ構造やnano-tendril bundleの電界電子放出特性に加え、ブレークダウン開始電圧の計測を行う。ブレークダウン開始は偶然性が高い現象であるため、統計的解析により表面構造変化がブレークダウン開始電圧の低下に及ぼす影響を精査する。 2.プラズマ中でのアークの点弧・持続条件の一般化 アーク電流・電圧特性によりアーク電圧が周辺プラズマと密接に関連することが明らかになった。一方、先行研究ではプラズマ電位に対する試料の電位が-60 V以上ではアークが発生しないことが示されており、アークの点弧・持続に上記の二つのパラメータの重要性が示唆される。今後の方策として、周辺プラズマのパラメータ・試料電位の変化により、アーク点弧・持続条件を明らかにし、アーク防止のための具体的条件を探索する。 3.アークによる不純物輸送の評価 今まで、アークの発生により短時間で多量の材料損耗が起きることが明らかになってきた。アークにより材料は中性ガスやプラズマのような気相から溶滴やダストのような固相や液相のものまで、様々な形態で飛散することが分かっている。今後の方策として、材料から飛散する溶滴やダストの収集実験を行い、アークによる材料損耗率と収集された溶滴・ダスト間の関係性を明らかにし、アークによる不純物の炉内輸送に関する知見を得る。
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Research Products
(9 results)