2017 Fiscal Year Annual Research Report
散乱法と顕微鏡法を駆使した高分子鎖・ヒドロゲル微粒子の環境応答性の評価
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17J05706
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松井 秀介 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ヒドロゲル微粒子 / 高速原子間力顕微鏡 / 吸着挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高速原子間力顕微鏡法によるヒドロゲル微粒子の基板上への吸着挙動の評価 本課題の目的のひとつである、ヒドロゲル微粒子の環境応答挙動を評価するためには、水中におけるナノスケールの動的挙動を直接可視化できる高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)による微粒子観察技術の確立が必要不可欠である。そのためには、ゲル微粒子をHS-AFMの観察基板上に吸着させる必要がある。そこで、ゲル微粒子が固体基板上に吸着する過程をHS-AFMで観察を試みた。まず、微粒子と基板との間の静電的相互作用が吸着の有無に与える影響を確認するため、基板の表面電荷の正負を変化させて検討した。基板は、負電荷のマイカと、アミノシラン処理を施した正電荷のマイカ基板を用いた所、表面電荷が負の微粒子は負電荷のマイカ基板には吸着せず、正電荷のマイカ基板には吸着した。この結果から、微粒子の吸着には、微粒子と基板との間に静電的引力が必要である事がわかった。続いて、微粒子の諸物性が吸着挙動に与える影響を調査するため、微粒子の素材をゲル、エラストマー、ポリスチレン等の高分子を選択し、微粒子の「柔らかさ」を変化させて検討を行った。微粒子の吸着速度と、微粒子が基板に吸着した瞬間の高さから算出した変形度を見積もった所、吸着速度と変形度に一定の相関関係が見られた。即ち、架橋密度が低く柔らかいヒドロゲル微粒子ほど、基板上での変形度と吸着速度が大きく、架橋密度の増加に伴い変形度と吸着速度が低下し、エラストマーや硬質微粒子ほど変形度が低く吸着しにくい事がわかった。本成果は学術論文として受理された。 2.ヒドロゲル微粒子に対するタンパク質吸脱着挙動の評価 本課題の目的のひとつである、ゲル微粒子に対するタンパク質の吸脱着に伴う環境応答挙動を多角的に評価し、ゲル微粒子とタンパク質間の相互作用がゲル微粒子の応答挙動に与える影響を明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の評価手法の要である高速原子間力顕微鏡法により、ヒドロゲル微粒子の動的挙動の可視化技術を確立できたため。また、ヒドロゲル微粒子をはじめとした種々の高分子微粒子の固体基板表面に対する動的な吸着挙動を捉える事に成功し、学術論文として受理されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は各種散乱法と顕微鏡法により、ヒドロゲル微粒子に対するタンパク質の吸脱着挙動をはじめとする環境応答挙動を多角的に評価し、ヒドロゲル微粒子の環境応答に伴う形態・構造変化の詳細を明らかにする。
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