2017 Fiscal Year Annual Research Report
運動器疾患の発症危険性評価のための精神状態を考慮した歩行t軸推移モデルの構築
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17J05708
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 愛実 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 歩行情報 / ロボット / 膝関節 / 追随 / 居住空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
Kinect v2を搭載した人追随ロボットを用いて、歩行時の膝関節位置および膝関節角度の推定手法を新たに提案した。Kinect v2で取得した深度データに対し、直線近似を行わずに、立位での点群データをフィッティングすることで膝関節角度を推定した。これにより近似による誤差が生じないため、3次元モーションキャプチャであるVICONを用いた精度検証結果が向上した。フィッティングのフェーズでは、3軸それぞれを回転させて角度を決定した場合に計算コストが膨大であったため、ICPアルゴリズムを用いて計算を行った。その結果、VICONとの平均誤差は6.5°から5.2°に向上し、相関係数の平均も0.86から0.92に向上した。 提案手法で推定した膝関節位置と、固定設置したKinect v2のスケルトントラッキング機能によって得られた膝関節位置の精度を、VICONを参照値として比較した。結果より、提案手法ではスケルトントラッキング機能よりも高い精度で膝関節位置の推定が可能であった。先行研究より、スケルトントラッキング機能による膝関節位置情報の誤差は臨床において許容範囲であることから、本提案手法の有用性が示された。 実験に用いる新たなロボットの設計・製作を行った。リハビリテーションセンタでの実験で得られたフィードバックを参考に、前モデルよりも駆動音の減少を図った大幅な設計変更を実施し、2台のロボットを製作した。 居住空間にロボットを導入し、実際の居住環境における人追随の試験並びにデータの取得を目的とした実験を行った。実験を通し、住宅のような通路の狭い環境下において、環境地図の入力および自己位置推定のアルゴリズムが必須であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、住宅内に導入可能な歩行情報取得システムの構築と、運動器疾患の発症危険性検知のための歩行t軸推移モデルの構築である。当該年度の研究計画では、複数台のロボットの製作、医療施設における運動器疾患患者の歩行の定期的な測定、測定データの蓄積、提案手法の精度検証、提案手法のロバスト性向上、および実居住空間での歩行情報取得実験の実施であった。 ロボットにおいては、前モデルを用いた実験で得られたフィードバックから、前モデルよりも駆動音を抑え、且つより小型なものを設計し、新たに2台を製作した。提案手法の精度検証に関しては、膝関節位置および角度に絞って実施した。固定したKinect v2のスケルトントラッキング機能との精度比較により、提案手法が臨床において十分な精度で使用可能であることが明らかになった。ロバスト性向上においては、これまでの直線順路のみではなく、曲がり角などの順路における歩行情報取得実験を実験室および実居住環境において実施した。測定対象者の方向転換時にはロボットに搭載したセンサから見て奥の足が手前の足に隠れやすく、両足の深度データを取得することが難しかった。欠損データの補完アルゴリズムを加える必要があり、現在検討中である。実居住空間での歩行情報取得実験はモデルルームにおいて実施済みである。実験を通して、ロボットの測定対象者追随手法や、データの取得方法に関して新たな課題を発見した。医療施設における運動器疾患患者の歩行の定期的な測定および測定データの蓄積に関しては、ロボットの動作において安全性に課題があったため、次年度へと延期することになった。当該年度に実施した研究は医療施設における測定を除いてすべて計画通りであり、次年度に向けた新たな課題の明確化も実現した。よっておおむね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
提案手法の精度検証は、膝関節位置および膝関節角度に絞って実施した。そのため、ほかの歩行情報についても精度検証を実施する。 モデルルームでの実験を通して、実際の居住空間には曲がり角などの順路が多く、人の動線も基本的に曲線となることが分かった。そのため、測定対象者の方向転換時にもデータの取得が可能となるように提案手法を改善し、そのロバスト性を向上する。固定設置したセンサで取得したデータを組み合わせることや、全身の立位データをあらかじめ取得し、入力することなどの、欠損データの補完アルゴリズムを加える。さらに、住宅のような通路の狭い環境下において、ロボットの測定対象者追随アルゴリズムには、環境地図の入力および自己位置推定のアルゴリズムが必須であることが分かった。新たにこれらのアルゴリズムを加えることで、住宅内において人追随可能なロボット制御を実現する。また、日常的にロボットに追随され、ロボットと共生することを前提とした、ロボットの大きさや動きに関する印象評価実験を実施する。結果に基づいて、人と共生するロボットの適切な仕様について検討する。 医療施設における運動器疾患患者の歩行の定期的な測定および測定データの蓄積に関しては、ロボットの動作における安全性を確保したうえで実施に移したい。上記の通り、居住空間内におけるデータ取得フェーズにおいて新たな課題ができ、またロボットの動作には未だ安全性の問題がある。そのため、今後はモデル作成用のデータを別の装置を用いて別途取得することで、データ取得フェーズとモデル作成フェーズを分離し、並行して実施したい。
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Research Products
(6 results)