2018 Fiscal Year Annual Research Report
A fundamental theory of large-scale systems for expanding power system design
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17J05742
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
浦田 賢吾 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | システム制御理論 / 分散制御 / 分散設計 / 受動性 / 二次振動子 / 電力システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,自然エネルギーの大量導入の状況下での安定的な電力系統の設計を目指して,個々の自然エネルギーの制御則の構築と系統への接続規則を考える.この設計問題を一度数学的に抽象化し,複数の小規模なサブシステムから構成される大規模システムの制御理論の問題として捉える.古くから研究されてきたロバスト制御理論では,新たなサブシステムを接続する前の大規模システムが最良であるとして,接続されたとしても安定性や制御性能を劣化させない設計論となっていた.一方で,本研究で目指す設計論では,そのような考え方ではなく,新たなサブシステムを接続するほどシステム全体の性能を厳密に向上させるような大規模システムの設計論の構築を目指す. 本年度では,その目標に向けて二つの研究に取り組んだ.一つ目は,大規模システムを構成する各サブシステムに対する新たな制御指標である局所化可能性指標を提案したことである.この指標は,各サブシステムに対する局所的な制御器設計をどのくらい分離できるか,すなわち,制御器設計の局所化に対する定量的な評価を与える.さらに,提案した指標は着目するサブシステムのみのモデル情報から推定可能であることを示し,電力系統に対する制御器の配置問題に適用した.二つ目は,接続規則の構築を目指した,複数の二次振動子から構成される大規模システムの制御性能とネットワーク構造の理論的な解析である.二次振動子は,電力系統内の同期発電機の動特性を表わしている.複数の同一のクラスタから構成される大規模システムを考える.ここで,各クラスタ内部では複数の二次振動子が存在し,各々が相互結合している.このとき,各クラスタ内部の二次振動子の数が増加させることを想定すると,クラスタ間のネットワーク構造が疎で,クラスタ内部の二次振動子間のネットワーク構造が密であるほど大規模システム全体の制御性能は向上することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も昨年に引き続き,次世代の電力系統の設計を目指し,規模の拡大に伴い性能が向上する大規模システムの基礎理論の構築を最終目標年,精力的に取り組み,期待通りに研究が進んでいると考えている.具体的な研究成果として,大規模システムを構成する各サブシステムに対する新たな制御指標の提案,および,各サブシステムは電力系統内の同期発電機を模擬した簡易なモデルである二次振動子を仮定して,規模の拡大に伴い大規模システム全体の制御性能が向上するネットワーク構造の理論的な解析の二点を達成した.一点目については,国内学術論文としてまとめ,計測自動制御学会論文集に採択された.加えて,査読付き国際学会である23rd International Symposium on Mathematical Theory of Networks and Systemsにて発表を行った.また,二点目の研究については,国内学会である第6回制御部門マルチシンポジウムで発表を行った.以上のことから期待通り研究が進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度取り組んだ研究の一つとして,複数の二次振動子から構成される大規模システムの制御性能とネットワーク構造の理論的な解析に取り組んだ.この解析では,二次振動子を増加させることを想定したとき,大規模システムの制御性能が向上するような二次振動子間のネットワーク構造を数値的におよび理論的に明らかにしたことが大きな貢献である.昨年度までの研究では,サブシステムのクラスとして,受動性に着目してきた.しかしながら,二次振動子の動特性は受動性の性質を持たない.それにも関わらず,二次振動子を増加させることにより,大規模システムの制御性能が向上することを示したことは,サブシステムに対して受動性よりも広いクラスを求める大きな手掛かりとなると期待できる.
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Research Products
(3 results)