2017 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患に着目した運動トレーニングの新たなアンチエイジング効果の探索
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17J05799
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 剛貴 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 運動トレーニング / αシヌクレイン / 凝集体 |
Outline of Annual Research Achievements |
試験管内でのαシヌクレイン凝集化実験を行うにあたり、物理化学的に凝集体構造を解析したところ、αシヌクレイン凝集体の新規の構造的特徴を見出した。興味深いことに、現在までにαシヌクレインが蓄積する神経変性疾患であるシヌクレイノパチーの病理多様性とαシヌクレイン凝集体の構造多様性は関連していると考えられているが、直接的な根拠は得られていない。そこで、本研究計画の第一段階として平成29年度は試験管内でのαシヌクレインの構造多様性によりスポットを充てて検討を行った。その結果は分子生物学会及び国際神経科学会で発表し、同分野の研究者から一定の評価を得ることができた。 マウスを用いた病理モデルの樹立に関しては遅れてはいるが、着手している。とりわけ、見出した凝集体の多様性と運動トレーニングによる刺激の関連を直接的に検出する方法を模索中である。研究計画に記載したオートファジーに着目した検討に関しては、種々オートファジー関連蛋白質に対する抗体を用いた免疫化学的な方法に加えて、生体内の代謝物の動態を捉えることを試みて、GC-MSを用いた代謝産物を検出する実験系を立てた。一般にオートファジーでは細胞内蛋白質の分解機構としてのみ捉えられがちであるが、近年その生理学的意義はより拡張されている。本研究の意図するアンチエイジング効果に対しては代謝と合わせて評価することでオートファジー自体の新たな価値を見出すことに繋がることをも期待している。また、動的な運動トレーニングという刺激を分解することで神経変性疾患への運動トレーニング刺激をシンプルに理解することへ繋がるのではとも考えている。それこそが本研究計画策定期に想定した目標であり、少し脇道にそれているようではあるが、研究は順調に進展している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動トレーニング実験の系の確立は自律運動モデルを用いて行っているが、着手しきれていない部分もある。一方、当初の予定とは異なるが、試験管内で凝集体構造の多様性を見出すことができた。本研究計画の目的は神経変性疾患のモデルを通して運動トレーニングの新たなアンチエイジング効果を見出すところにあるため、試験管内モデルに着目した解析も今後進めたいと考えている。現在までは、運動トレーニングモデルは動物実験を用いた解析が主であるが、運動トレーニング自体が様々なパラメータが複雑に関与している刺激である点から評価の難しさが指摘されていた。申請者が今回見出した試験管内での凝集体の多様性実験を切り口に生体内での運動トレーニング効果を評価できる系を確立していきたいと考えている。 当初の研究計画から少し離れた試験管内での凝集実験を行うことが多くなった。しかしながら、当初の目的に即した系になっており、研究全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定から動物実験モデルの確立は遅れているため、出来る限り早く着手する。ただ、試験管内での凝集体形成実験が非常にうまくワークしているため、その系を用いて試験管内で運動トレーニングを模倣したような状態を作り、運動トレーニングが凝集体蛋白質の形成におよぼす影響を評価できないかと考えている。当初の実験モデルの確立を行いながら、新しい観点からの運動トレーニングモデル実験の確立を行っていく。
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