2017 Fiscal Year Annual Research Report
音響的・空間的混雑に対する生物ソナー・コウモリの適応行動モデリング
Project/Area Number |
17J05800
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
長谷 一磨 同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | エコーロケーション / コウモリ / 混信回避行動 / 信号間類似度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,コウモリが自らのエコーを選択的に聴取するメカニズムと,効果的に他個体との音響混信や衝突を回避する手段を解明することである.さらには,それらを組み合わせ具体的なセンシング・行動制御アルゴリズムとして提案することを目指す.具体的には,①精密な計測システムを構築し飛行実験・心理実験を行うことにより,混信回避・衝突回避行動やエコー抽出メカニズムをコウモリの行動面から解明する.また,②行動実験から得られた知見をアルゴリズム化し,シミュレーションや実機を用いた実環境における検証を行い工学的に評価する.本年度は,群飛行時のコウモリ各個体から音声と飛行軌跡を計測するシステムを確立し,実際に実験室内を4個体で飛行するコウモリのエコーロケーション行動の観測に成功した.これにより,単独飛行時には類似する音声を利用していたコウモリが,集団飛行時には音声の終端周波数をアクティブに変化させ互いに遠ざけることで,個体間の音声類似度を低下させることを明らかにした.また,コウモリの音声を模擬した信号を用いたシミュレーションを行うことで,コウモリが利用する超音波音声が混信に強いこと,また,終端周波数の変化が他の音響特性の変化に比べ効率よく個体間の音声類似度を低下させることを明らかにした.この結果は,コウモリが空間把握に用いるセンシング信号の特徴にあった効率の良い手段を用いて群行動時の混信を回避している可能性を示唆する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,本研究課題の核となる,集団飛行時のコウモリの適応的行動を観測するシステムの確立に成功し,コウモリがシンプルかつ効率の良い手段で音声の混信を回避することを明らかにした.今後計画している心理実験やシミュレーションや実機を用いた工学的検証を通じて,具体的な混信回避・衝突回避アルゴリズムとして提案するための,大きな足がかりとなったといえる.そのため,おおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き集団飛行時のコウモリの行動を観測し,飛行の相互作用に応じたセンシングの変化を検討する.また,目的音声抽出メカニズムの解明を目指し,コウモリに対して心理実験を行う.これらの行動実験・心理実験で得られた知見をアルゴリズムとして提案するために,シミュレーションと,超音波センシングを用いて移動する自律走行車を用いた検証を行う.
|