2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J05930
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平岡 毅大 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | オステオポンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、子宮再生医療の確立に向け、本研究員が近年報告した脱細胞化子宮組織を用いた生体内でのマウス子宮再生モデル(JCI insight, 2016)を応用し、試験管内での子宮再生培養系の樹立を目標としたものである。子宮特異的STAT3欠損マウス(ΔSTAT3)の子宮再生能が低下していたことから、①ΔSTAT3を解析し、STAT3の下流における子宮再生制御機構を解明する②脱細胞化組織を用いて試験管内で子宮細胞を培養する技術を確立し、①で得た知見をもとに、より最適な培養条件下で(再生を促進する化合物の同定・添加など)効率的に組織培養を実現することを目標としている。 ①については、野生型マウス(WT)とΔSTAT3の上皮再生過程の遺伝子発現の差異に着目し、解析を行った。具体的には、移植後3日目に、<a.移植した脱細胞化組織表面に再生された上皮>、<b.移植した脱細胞化組織周囲の上皮>、<c.移植を行っていない、対側子宮角の上皮>の三群の上皮を、レーザーマイクロダイセクションを用いて回収し、RNAシークエンスを行った。その結果、WTの<a>において、分泌タンパク質であるオステオポンチン(OPN)がΔSTAT3と比較し、約4倍発現が上昇していることが明らかとなった。また、RNAシークエンスや免疫染色の結果、OPNの発現は、WTの<b>よりも<a>において上昇が認められた。OPNは線維芽細胞や免疫担当細胞の遊走に関わることが知られており、肝臓など他臓器における損傷からの再生過程に重要な役割を果たしていることが知られていることから、OPNがSTAT3の下流で、子宮の間質や筋層の再生に関わっている可能性が示唆される。 ②に関しては、現在、脱細胞化組織の深部にまで培養液を浸透させ、細胞を長期培養するための還流培養装置を開発中である。まずは3日間の還流培養実験を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の達成目標は、①マウス脱細胞化組織移植モデルを用いた生体内での子宮再生機序の解明、②脱細胞化組織を用いた試験管内での子宮細胞の培養、の二つに大別される。本研究員はこの1年間で、子宮再生能が低下した子宮特異的STAT3欠損マウスの遺伝子発現解析を行い、転写因子STAT3の下流において、線維芽細胞や免疫担当細胞の遊走を制御し他臓器の再生への寄与が報告されているオステオポンチン(OPN)が、子宮再生において何らかの機能を有していることを示唆する研究成果を上げた。今後は、OPNが子宮再生に果たす機能についてより詳細な研究を行う予定であり、子宮再生と免疫担当細胞の関与が明らかになる可能性や、子宮再生を促進する化合物の同定につながる可能性があり、今後の発展が大いに期待される。また、②に関しては、現在、脱細胞化組織を用いた試験管内での還流培養装置の開発に取り組んでいる途上であり、もしこの技術が確立されれば、①で得られた知見を活用し、より効率的な子宮再生培養系の樹立が期待される。総じて、この一年間の研究成果としてはおおむね期待通りの進展が得られたものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本研究の目標は①再生能が低下した子宮特異的STAT3ノックアウトマウス(ΔSTAT3)を解析し、STAT3の下流における子宮再生制御機構を解明する②脱細胞化組織を用いて試験管内で子宮細胞を培養する技術を確立し、①で得た知見をもとに、より最適な培養条件下で(再生を促進する化合物の同定・添加など)効率的に組織培養を実現すること、の二点に大別される。 ①に対しては、RNAシークエンスによりオステオポンチン(OPN)が同定されたため、今後は子宮再生に関するOPNの機能について解析する予定である。具体的には、OPN欠損マウスの子宮再生の表現型解析や、ΔSTAT3に移植する脱細胞化組織にOPNを浸漬させることで再生が救済されるか、などの実験を計画している。 ②に対しては、脱細胞化組織を用いた試験管内での還流培養装置の開発に取り組んでいる途上である。用いる細胞については、採取したマウス子宮を細切しコラゲナーゼで処理し回収した上皮・間質・筋層が混合した末梢分化細胞であり、この細胞を含んだ懸濁液を注射器を用いて脱細胞化組織内に注入し、まずは3日間の還流培養実験を試みる。もし系の確立に成功すれば、肝臓における報告のように、脱細胞化組織をを用いた試験管内の還流培養系で最長の21日を目標とする。この時、①で得られた知見を活用し、組織再生培養に最適な条件を模索する方針である(OPNの添加など)。
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Research Products
(1 results)