2017 Fiscal Year Annual Research Report
イネ全身抵抗性に関与するトレハロース認識とシグナル伝達機構に関する研究
Project/Area Number |
17J05971
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
手塚 大介 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | トレハロース / ジャスモン酸 / 受容体型キナーゼ / リン酸化シグナル / 植物免疫 / 病害抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ根部へのトレハロース処理は地上部での病害抵抗性を誘導する(Trehalose-induced-Systemic-Resistance: TSR).本研究ではTSRのシグナル伝達機構を明らかにするため,根部でのトレハロース認識とそれに続くリン酸化カスケード,及びトレハロース誘導性転写因子の解析を行った. 発現様式から,トレハロース認識に関わると予想された受容体型キナーゼTIRK1およびTIRK2について,過剰発現株を作出しトレハロース応答性について遺伝子発現から解析した.TIRK1過剰発現株では野生型株と同等のトレハロース応答を示したのに対し,TIRK2過剰発現株ではトレハロース応答が迅速かつ増強されて観察され,TIRK2がトレハロース受容体あるいは受容複合体の構成因子である可能性が示唆された.またトレハロース処理根部におけるリン酸化プロテオミクス解析を行い,解糖系酵素群およびカルビン回路酵素群のリン酸化/脱リン酸化の変動を観察したが,これが防御応答にどのように関与しているかは不明である. トレハロース処理根部ではジャスモン酸類が速やかに蓄積する.そこでTSRにおけるジャスモン酸依存的経路の解析を実施した.トレハロース処理で早期に発現誘導される転写因子78遺伝子のうち,ジャスモン酸生合成変異株で誘導が消失する遺伝子としてERF83を見出した.ERF83過剰発現株を作出し,PRタンパク質およびファイトアレキシン生合成遺伝子の発現を観察した結果,トレハロース処理により誘導されるPRタンパク質の発現が複数上昇していた.従ってTSRにおけるジャスモン酸依存的経路では,ERF83が正の調節因子として機能することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い受容体型キナーゼの解析を実施し,TIRK2がトレハロースシグナルに深く関与する可能性を示した.今後の進捗に期待が持てる.またTSRにおけるジャスモン酸依存的な経路についても,ERF83をはじめとする複数の転写因子の関与を示す結果を得ており,経路の全容解明へ向けた足掛かりを得ることができた.リン酸化プロテオミクス解析では予想と異なる結果も得られたが,年度計画全体を通して期待通りの成果を上げたと判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
根でのトレハロース認識機構を明らかにするため,引き続きTIRK2の解析を行う.CRISPR-Cas9を用いて変異株を作出し,トレハロース応答にどのような変化が生じるかを遺伝子発現解析や病害抵抗性試験を用いて多角的に観察する.30年度終了時までにTIRK2がトレハロース受容因子であるかを決定する. TSRにおける転写制御ネットワークについてさらなる解析を行う.本年度,ERF83とともに見出されたジャスモン酸依存型トレハロース誘導性転写因子について,形質転換体等を用いた解析を実施し,TSRにおけるジャスモン酸依存的経路のより詳細な解明を試みる.またジャスモン酸に依存しない転写因子については,その発現機構を解析する.この結果よりTSRを支配する新たなシグナル因子の検討を行う.
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Research Products
(1 results)