2017 Fiscal Year Annual Research Report
Behavioral economics approach to prevent dental caries among children in poverty
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17J05974
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松山 祐輔 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | う蝕 / 子ども / 予防歯科 / 非認知スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
東京都A区の小学1年生およびその保護者を対象にした横断調査データを分析し、子どもの自己統制力とう蝕の関連およびその媒介要因について研究した。分析の結果、共変量調整後、自己統制力が低い子どもは乳歯う蝕が有意に多いことが明らかになった。さらに、この関連はブラッシング頻度、ジュースを飲む頻度、間食習慣により媒介された。この結果から、自己統制力が低められる環境で育つことで、長期的なメリットのある健康的な行動を選択しにくくなりう蝕に至るという経路が示された。自己統制力を高めるような子育てや保育園などへの介入は、う蝕予防にも有効である可能性が示唆された。 また、同データを使用し、う蝕予防に関連する子育てについても分析中である。子供との関わりに関する31項目の質問から、因子分析をもちいて3因子(虐待傾向、無関心、健康関連ネグレクト)を抽出し、これらの因子と乳歯う蝕経験歯数との関連を分析した。分析の結果、虐待傾向(-)・無関心(-)にくらべ、虐待傾向(-)・無関心(+)および虐待傾向(+)・無関心(+)の子どもは乳歯う蝕が有意に多かった。一方で、虐待傾向(+)・無関心(-)は乳歯う蝕が有意に少なかった。本研究内容は現在論文執筆中である。 さらに、う蝕予防に効果的である学校フッ化物洗口の費用対効果分析を進めている。東京都A区の全小学1年生を1年間追跡した縦断データを分析し、う蝕の発生確率を個人の特性ごとに線形回帰分析により求め、得られたう蝕の発生確率と文献から得たフッ化物洗口のう蝕予防効果およびその他のパラメータをもちいて、実社会における集団のう蝕リスク分布を考慮したモンテカルロシミュレーションにより、A区で集団レベルのフッ化物応用が普及した場合のう蝕減少効果および歯科医療費削減効果を検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、当初の計画のとおり、平成28年度に実施された東京都A区の悉皆的健康・生活調査データを分析し、論文投稿に至った。その他、う蝕予防につながる親子の関わりおよび、う蝕予防のポピュレーションアプローチの費用対効果について分析中である。オランダに渡航し歯科医療経済学および歯科ライフコース疫学研究の第一人者であるListl教授(オランダ・ラドバウド大学)のもとで分析手法を学ぶなど順調に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在分析中の研究について論文を執筆し投稿する。本年度までに得た調査データの解析をすすめ、学会発表・論文化するとともに、自治体の施策設計に資する情報を提供する。特に縦断データを重点的に分析し、背景要因とう蝕の因果関係を明らかにする。具体的には、「貧困により低められた子どもの自己統制力が、う蝕を増加させる」との仮説にもとづき分析をする。また、保育園ですでに行われているう蝕予防施策の効果検証も行っていき、う蝕予防に効果的な介入の確立に貢献していく。
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Research Products
(1 results)