2017 Fiscal Year Annual Research Report
放線菌由来新規ニトロ化酵素の同定と芳香族ジアミン生産系の開発
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17J06071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 宏矢 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 放線菌 / 生合成 / Streptomyces / シトクロムP450 / 非リボソームペプチド / 二次代謝 / 天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに放線菌Streptomyces atratusのドラフトゲノム解析を行い、rufomycin生合成を担うと予想される遺伝子クラスターを取得し、その中からチロシンのニトロ化酵素の候補遺伝子rufOを発見した。今年度はrufomycin生合成遺伝子クラスターの遺伝学的解析、RufOの酵素学的解析、RufOの結晶化条件の検討に関して研究を行った。 遺伝学的解析では、rufO遺伝子破壊株の作製を行い、そのrufomycin生産能を調べた。その結果、遺伝子破壊株はrufomycin生産能を失った一方で、その培地中にニトロチロシンを添加した場合、rufomycinの生産が回復することがわかった。このことから、RufOは予想通りチロシンのニトロ化酵素であり、そのニトロ化反応はrufomycinのペプチド骨格形成に先立って、遊離のチロシンを基質として行われることが強く示唆された。次に酵素学的解析では、RufO組換えタンパク質が確かにチロシンのニトロ化反応を触媒することを明らかにし、遺伝学的解析の結果が強く支持された。また基質特異性に関して検証を行った結果、RufOはチロシンに対して高い特異性を示すことを明らかにした。結晶化実験では、RufOの結晶化条件のスクリーニングを行い、再現性よく結晶化する条件を発見した。 以上の結果より、RufOが予想通りチロシンをニトロ化する酵素であることを明らかにし、酵素学的に重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、rufomycin生合成についての知見を得ることができた。また目的のチロシンニトロ化酵素RufOの取得に成功した。この結果は酵素学的に大きな成果であると考えられ、シトクロムP450酵素の新たな能力を示すことができたとともに、今後さらなる研究への波及効果が期待できる。またRufOの結晶化条件を発見し、今後の研究推進への展望も拓けている。さらに芳香族ニトロ基に関する別のアプローチとして、芳香族アミノ基を酸化的にニトロ基へと変換する放線菌由来の酵素AurFに関しても検証を重ねた。以上より、当初の研究計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の研究計画に則って進める。結晶構造解析実験が難航した場合、RufOのホモログを用いた解析を行う必要が生じる可能性がある。
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