2017 Fiscal Year Annual Research Report
Search for supernova relic neutrinos by improving neutrino neutral current cross section measurement
Project/Area Number |
17J06141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芦田 洋輔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ニュートリノ中性カレント反応 / 中性子・酸素原子核反応 / ガンマ線 / スーパーカミオカンデ / ミューオンモニター / T2K実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、T2K実験におけるニュートリノ中性カレント反応の精密測定およびその結果を用いたスーパーカミオカンデでの超新星背景ニュートリノの探索感度向上である。初年度の研究計画は、ニュートリノ中性カレント反応測定における系統誤差の最大要因である中性子・酸素原子核反応から放出されるガンマ線の測定を行い、現状の物理モデルへ反映させることであった。 まず、初年度に大阪大学核物理研究センターで実施予定であった実験に必要なCsI(Tl)シンチレータを用いた中性子背景事象の測定手法に関して、平成29年度に東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにて試験を行った。解析を初年度に行い、手法は十分応用可能であるとの結果を得て学術論文として公開した。そして、核物理研究センターでの本実験では、エネルギー80 MeVの中性子を用いて中性子・酸素原子核反応由来のガンマ線測定に成功し、スーパーカミオカンデでの物理モデル改善が大いに期待される結果であった。結果の解析は概ね終了しており、学術論文として投稿予定である。ビーム実験結果を用いた物理モデルへのフィードバック作業も開始されている。 上記に加えて、T2K実験のビーム方向測定器・ミューオンモニターに関する研究も行った。本研究は当初の計画にはなかったが、2年目に解析するデータを順調に取得するためには非常に重要な仕事である。結果として、ミューオンモニターの管理・運用を行い、データ取得に大いに貢献した。また、将来のT2K実験のための新型ミューオンモニターの開発も進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、中性子・酸素原子核反応から放出されるガンマ線の測定を行うことであった。 平成29年度はじめに核物理研究センターで行ったテスト実験により、散乱中性子が本測定の大きな背景事象になることがわかり、対応策としてCsI(Tl)による背景事象測定手法を考案した。実際に、サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターにおいて手法をテスト・実証し、本測定で実際に使用した。 また、当初の計画にあったエネルギー80 MeVでの中性子・酸素原子核反応の測定も成功し、結果は原子核ライブラリにはないエネルギー領域・反応過程の結果であるため、スーパーカミオカンデのモデル改良に大いに有用である。さらに、追加のエネルギー点を同様の手法で測定できることを確認し、新たに30 MeVと246 MeVでの実験を核物理研究センターに対して提案し承認された。測定は平成30年度に行う予定である。 ビーム実験に加えて、実際に原子核モデルの改良作業も開始しており、新たなシミュレーションパッケージの作成も開始している。 上記の本研究課題の計画に加えて、当初の計画にはなかったT2K実験・ミューオンモニターに関する研究を進めている。ミューオンモニターはT2K実験のビーム方向測定器であり、データ取得には必須の検出器である。データ取得期間に検出器の運用・管理を行い、研究課題2年目に解析予定のデータ取得に大いに貢献した。また、将来的に必要になる新型検出器の開発も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、スーパーカミオカンデで使用されている原子核モデルの改良を完了し、T2K実験のニュートリノ・反ニュートリノ中性カレント反応断面積の測定解析を行う。また、モデル改良の際に参照するための追加のビーム実験を核物理研究センターにて行う予定である。T2K実験の解析では、原子核モデルの改良に加えて、先行研究のない反ニュートリノモードでの背景事象に関する研究、中性子タグを用いた新しい解析、ニュートリノ反応モデルを参照した系統誤差の削減などを予定している。結果は世界最高精度での測定となる見込みである。 平成31年度には、まずスーパーカミオカンデにおいて大気ニュートリノの中性カレント反応事象に関する研究を行う。現状では、超新星背景ニュートリノ探索において、大気ニュートリノの中性カレント反応は100%の系統誤差を付けており、T2K実験での結果を適用することにより系統誤差の大幅削減を目指す。また、本研究課題で改良した原子核モデルを用いて新たに超新星背景ニュートリノ探索における背景事象を再評価する。以上を行った後、本課題の最終段階としてスーパーカミオカンデの全データを用いた超新星背景ニュートリノ探索解析を行い、結果を用いて現状の宇宙論モデルに対するフィードバックを与える。
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Research Products
(12 results)