2017 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍微小環境における死細胞を介した免疫応答機構の解明
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17J06167
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中澤 優太 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | CD300a / 腫瘍微小環境 / 制御性T細胞 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍細胞は、腫瘍微小環境において制御性T 細胞(Treg) を増加させ、腫瘍排除に働く免疫細胞を弱体化させる機構がある。申請者らは、免疫細胞上に発現する分子である CD300a を欠損させたマウス (CD300a KO) にメラノーマ細胞株を担癌すると、野生型マウス(WT)と比較して CD300a KO マウスで腫瘍が著しく大きくなることを見出した。実際に、CD300a KO の腫瘍組織において、 Treg の増加が観察された。そこで、 Treg の除去抗体をマウスに投与すると、WT と CD300a KO マウスで腫瘍径の増大に差を認めなくなったことから、CD300a KO マウスにおける腫瘍増大には Treg が関与することが示唆された。 フローサイトメトリを用いた解析から、腫瘍浸潤細胞のマクロファージと樹状細胞に CD300a が発現することを明らかにした。複数の細胞に CD300a の発現が確認できたことから、選択的遺伝子欠損マウスを用いて責任細胞を検討した。その結果、マクロファージでなく、樹状細胞上の CD300a が腫瘍増大に関与することを明らかにした。腫瘍内に浸潤してくる免疫細胞の割合を WT および CD300a KO マウスで比較した。制御性T細胞以外の免疫細胞の集団には WT 及び CD300a KO で違いを認めなかった。しかし、機能的な違いを検討したところ CD300a KO 由来の CD8 陽性 T 細胞で IFN-γ の産生能が減少していた。 次に、CD300a KO マウスにおける Treg 増加因子を検討したところ、CD300a KO の樹状細胞で IFN-β の発現が亢進していることを明らかにした。現在、IFN-β の産生メカニズムの解析や CD300a のリガンドの局在を検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD300a KO マウスの腫瘍内で Treg が増加していることを明らかにした。また、CD300a KO マウスにおいて、増加した Treg は、腫瘍内の CD8 陽性 T 細胞の活性化を制御していることを明らかにした。現在までに、一部予定よりも遅れている部分があるが、in vivo に関する実験は概ね順調に進行でき、一部来年度の実施予定である内容まで取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍内の Treg は、腫瘍排除に働く免疫細胞の活性化を制御し、その病態形成に大きく関わっている。しかし、腫瘍における Treg の増殖に関しては、不明な点が多い。これまでに、我々は IFN-β が Treg の増殖因子であることを報告してきた。そのため、腫瘍内における IFN-β の産生に関するメカニズムを平成30年度解析する予定である。平成30年度実施予定の2点を示す。 1. 腫瘍細胞からの 傷害関連パターン分子(DAMPs)が IFN-β産生に関与するか検討する。具体的には、無菌のマウスを用いて、常在菌でなく、DAMPs が IFN-β の産生に関与することを示す。 2. DAMPs がどのような受容体を介して、IFN-βの産生を惹起するのか。in vitro での評価系を立ち上げる。
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