2017 Fiscal Year Annual Research Report
関数データ解析法に基づくノイズの多い生体情報データへのレジストレーション法の開発
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17J06200
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高岸 茉莉子 同志社大学, 文化情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 質問紙調査 / リッカート尺度 / 関数データ / 回答スタイル / クラスタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は痛みの自己評価などで用いられるリッカート尺度タイプの質問紙調査における対象ごとの回答傾向の違いの問題を,関数データ解析法の枠組みで解決する方法論を構築した.具体的には,回答データにクラスタリングを適用すると,例えば極端なカテゴリを選ぶアメリカ人,中央のカテゴリを選ぶ日本人に分かれてしまうなどで,詳しい解釈が得られない,といった状況に対し,この対象ごとの回答傾向の違いを補正した上でクラスタリングを行う方法を考えた.本研究ではそのために,(1)各対象の回答傾向を連続関数で表現することで,関数の形から回答傾向の特徴を把握する枠組みを構築し,そして(2)その関数を用いて,回答傾向バイアスを補正し,また同時に補正した回答をベースに対象をクラスタリングするアプローチを開発した.まず(1)について,本研究では対象ごとの回答傾向を表す「回答関数」を考え,そして対象ごとに回答関数を推定し,関数の形から対象の回答傾向の特徴を把握することを考えた.また関数の推定にはI-Spline基底関数を用いることで,形の特徴を定量的に評価できるようにした.またこの係数を用いて,対象数が多い場合でも,極端な回答傾向を持っている対象が一目で把握できるような視覚化方法も開発した. 次に(2)について,本研究では,回答傾向の特徴を関数で表現したため,その関数を用いて,元のデータから回答傾向バイアスを補正したデータへの変換を行うことができる.また本研究ではこの補正と補正したデータへのクラスタリングを同時に行うことを,制約付き最小二乗法を解く問題に帰着させた.そして本研究では数値シミュレーションと実データ解析例にて,回答傾向バイアスのあるデータに対し,提案手法の方が既存のクラスタリング法よりも精度よくクラスターを検知していることを示した.これらの結果を論文にまとめ,雑誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は痛みの評価などによく用いられるリッカート尺度タイプのデータに対する,関数の形に基づく特徴把握のアプローチを提案した.これらの内容は2件の国際学会で発表し,また雑誌にも投稿し,現在査読中である.従って本来の目的は大方達成できたと考える.また2017年度の後半はオランダのErasmus University Rotterdamで,回答傾向の違いを検知する手法をかつて提案された先生と共同で行っており,当初より雑誌の投稿時期などは遅れたものの,より深い議論に基づいた成果を得たと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究では,回答関数を推定するために,得られた回答データそのものを用いていた.しかしこれでは例えばその対象が高いカテゴリばかり選ぶと解釈されても,それが回答傾向なのか,本当に高い評価をしているのかの区別が難しい.従って今後は係留寸描法などで回答傾向を表すデータ(寸描)と自己評価のデータが異なるデータとして別に得られるようなデータを想定し,寸描データから回答傾向を表す関数をいかに推定するかなどの問題を検討する.
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Research Products
(5 results)