2017 Fiscal Year Annual Research Report
高PI食品摂取頻度調査法およびエピゲノム変化を指標とした習慣的な食事調査法の確立
Project/Area Number |
17J06281
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
楢崎 遥子 徳島大学, 大学院栄養生命科学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / リン / 食事 / エピゲノム / FGF23 / Klotho |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では慢性腎臓病の予防や治療の鍵を握る食事からのリンの摂取に着目している。研究目的は、生体へのリン負荷の高い食品(高PI食品)の摂取頻度を的確に把握できる食事調査方法の開発と、習慣的なリン摂取状況を反映する生体指標の探索により、新しい食事評価手法の確立を目指すというものである。当該目的を達成するために、本年度は高PI食品摂取頻度調査法の確立を試みた。 まず既存の一般的な食事調査法である自記式食事歴法質問票(DHQL)による、高PI食品摂取量の推定精度を検証した。若年健常者19名を対象に、DHQLを用いた1か月の食事内容を調査と、比較基準としての半秤量式食事記録を用いた6日間の食事調査を実施した。その結果、DHQLを用いることで、高PI食品のうち乳類摂取量の推定は可能であることが示されたが、加工食品摂取量の推定には限界があったことから、既存法では、高PI食品の摂取量を把握することは難しく、PIに特化した調査法の必要性が明らかとなった。 続いて、PIに特化した食事調査法の確立を目指し、95名に調査を実施した。DHQLおよび開発した高PI食品摂取頻度調査法を用いた1か月間の食事調査と、半秤量式食事記録を用いた同月の非連続な6日間の食事調査を実施した。また1回の早朝空腹時採血も行い、推定摂取量と生体指標の有力候補として線維芽細胞増殖因子23(FGF23)濃度との関係について解析を行った。その結果、高PI食品摂取頻度調査法の妥当性が示された。しかしながら、早朝空腹時のFGF23であっても、食習慣のみならず前日の食事の影響が大きく反映される可能性や、早朝空腹時の採血の単回測定による値では食習慣を反映するものとしては不適切である可能性が示唆された。これらを踏まえて現在は、食習慣評価指標としてのFGF23の妥当性の評価と、それ以外の生体指標の探索に向けたヒト試験の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は高PI食品摂取頻度調査法の確立を目指していた。既存の一般的な食事調査法である自記式食事歴法質問票(DHQL)を用いた検討により、既存法では高PI食品の摂取量を把握することは難しいことを実証し、よりPIに特化した調査法の必要性が明らかとすることができた。続いて、よりPIに特化した食事調査法を用いた検討により、高PI食品摂取頻度調査法は高PI食品の摂取頻度調査法として妥当性を示すことができた。また推定摂取量と生体指標の有力候補として線維芽細胞増殖因子23(FGF23)濃度との関係について解析を行ったところ、推定摂取量と線維芽細胞増殖因子23(FGF23)濃度などの生体指標との関係については関連性がみられないとの結論に至った。そして早朝空腹時のFGF23であっても、食習慣のみならず前日の食事の影響が大きく反映される可能性や、早朝空腹時の採血の単回測定による値では食習慣を反映するものとしては不適切である可能性を見出した。 以上のことを総合して、単回測定による早朝空腹時FGF23濃度が生体指標としては不適切であるとの見解に至った部分以外は計画時の予想通りの結果が得られた。今後多少の軌道修正が必要となるが、最終的な目的達成には支障とならない程度であることから、概ね期待通りの進展具合であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高PI食品の摂取頻度と生体指標との関連についての検討を進める。動物試験では、摂取量マウスを用いた動物試験により、リン過剰負荷がα-Klotho遺伝子のエピゲノム変化に及ぼす影響を検討し、分子機序の解明を行う。またヒト試験では、動物における知見を基に、ヒトにおける同遺伝子エピゲノム変化の同定を試みる。さらには本年度の研究により新たな検討が必要と判断されたFGF23についての項目を調査する。具体的には、1カ月に複数回の早朝空腹時のFGF23濃度を測定してその平均値を算出し、同時に各採血日前日に食事調査を行うことで、食習慣評価の生化学指標として複数回測定におけるFGF23平均値の意義、FGF23濃度への前日の食事の影響度合、およびFGF23濃度の違いに影響する食品の探索を試みることとする。
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Research Products
(7 results)