2018 Fiscal Year Annual Research Report
言語における「音と意味の対応関係」の学習を支える認知科学的な仕組みとその神経基盤
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17J06331
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
板垣 沙知 同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 音象徴 / 乳幼児 / 言語獲得 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、言語獲得前後の生後9か月、12か月、15か月の乳幼児を対象にした音と意味の結びつきの獲得過程を評価する実験に対する実験を行った。乳幼児は馴染みのあるものや好ましいと感じるものに対して視線を向ける傾向があることが知られており、本研究では視線計測機器を用いて視線の動きや停留時間を計測し比較した。 被験者である乳幼児は母親の膝の上で抱きかかえられ、モニターに視線を向けるよう求められた。モニターに視覚刺激が呈示され、併せて音刺激がスピーカーから呈示された。視覚刺激は図形の輪郭(とげとげしいあるいは丸みを帯びている)が異なる図形(Shape条件)と大きさの異なるボールの絵(Size条件)とした。音刺激には、大きい/丸みと結びついていると報告されている日本語単音節“a”と低周波数のトーンバースト(100Hz)および小さい/とげとげしさと結びついていると報告されている日本語単音節“i”と高周波数のトーンバースト(400Hz)を用いた。 結果として、どちらの条件においても音刺激がトーンバーストの場合は低周波数のトーンバーストの方が視覚刺激への注視時間が長くなった。このことから、トーンバーストの場合は視覚刺激と音刺激それぞれから想起される印象が一致しない方への選好性が高く、それは月齢に依存しないことが示唆された。一方で、音刺激が日本語単音節の場合は9か月では印象が一致する方への注視時間が長く15か月は印象が一致しない方への注視時間が長くなった。その傾向は、どちらでの条件でも確認された。このことから、日本語単音節の場合は月齢が変化するにつれて親近性の高い方への選好性から新奇性の高い方への選好性へと変化することが示唆された。乳幼児の関心が親近性から新奇性へと変化することは他の実験からも報告されており、言語においても同様の変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、言語獲得前後の乳幼児として生後9カ月、12か月、15か月の3つの月齢を対象に実験を実施した。実験では乳幼児にモニターに視線を向けてもらい、呈示刺激に対する視線の停留時間を計測し評価した。この乳幼児を対象にした視線計測実験の実施を通して、集中力の維持等が困難な乳幼児に合わせた刺激の提示方法などを確立した。この実験の結果、乳幼児の月齢が変化するにつれて呈示刺激への視線の停留の傾向が親近性のある刺激から新奇性のある刺激へと変化することが確認された。これまでに複数の月齢を対象に同一パラメータで検証している実験はなく、今回初めて言語獲得と音と意味の結びつきを検証することができた。以上のように、当該年度において期待通りの成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は乳幼児を対象に新たな行動評価実験を実施する。具体的には、輪郭の異なる玩具を作成しその玩具の動きに合わせて音を呈示する。乳幼児は好ましいと思う対象に対して手を伸ばすリーチングという動作をすることが知られている。このリーチング動作を利用し、輪郭の異なる2種類の玩具を同時に呈示して実験者が玩具を動かすことで音を呈示した際にどちらの玩具に対してリーチング動作を行うのかをビデオカメラで記録し計測する。 この実験により、より乳幼児が積極的に選択する環境が構築できると考えられる。昨年度の実験と本年度の実験を併せて検討することで乳幼児の言語発達と音象徴の関係を多角的に捉えられることが期待される。
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Research Products
(5 results)