2017 Fiscal Year Annual Research Report
腸管毒素原性大腸菌(ETEC)の腸管定着機構の解明および定着阻害剤の開発
Project/Area Number |
17J06388
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沖 大也 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 腸管毒素原性大腸菌 / IV型線毛 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸管毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli :ETEC)の病原性発現の要となる線毛性定着因子の定着機構を分子レベルで理解することを目的としている。具体的には、“菌体表面にどのような線毛を形成し、如何にして標的細胞に結合し、定着を達成するのか?”という課題に関して、各構成タンパク質の三次元立体構造解析、相互作用解析、線毛の分子モデリング解析、そして細胞アッセイや動物実験から得られるデータを総合的に解釈することで、そのメカニズムおよび阻害法を提案する。本年度は、ETECが菌体外に分泌し定着過程において重要な役割を果たしていると考えられるタンパク質CofJの機能解析を試みた。CofJ遺伝子欠損株を用いた透過型電子顕微鏡撮影、細胞実験、免疫染色実験の結果、ETECの細胞への定着には菌体表面に形成するCFA/III線毛に加えて分泌タンパク質CofJを必要とすることが示唆された。また、プルダウンアッセイ、等温滴定型熱量計を用いた相互作用解析の結果、CofJは可動性の高いN末端領域において、線毛の大部分を構成するメジャーピリンCofAではなく線毛先端部にのみ存在するマイナーピリンCofBと結合することを見出した。CofJとCofBの相互作用に関する更なる知見を得るために、合成したCofJのN末端領域ペプチドとCofBとの共結晶化を試みた。複合体結晶の作成には困難を極めたが、最終的に測定可能な針状結晶を得ることに成功し、複合体構造を決定した。さらに、超遠心分析法の結果と結晶構造を組み合わせることで、CofJを含むCFA/III線毛全体のモデル構築を行い、新規のETECの定着モデルを提案することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、複合体結晶化実験など時間と試行錯誤を大いに必要とする場面もあったが、ETECが菌体外に産生する分泌タンパク質と線毛先端部に存在するマイナーピリンが相互作用することを初めて明らかにし、それらのモデル構造の構築にも成功した。さらに、本研究目的の一つであるETECの定着メカニズムに関して新規のモデルを提案するに至った。これらの研究成果はETECの定着阻害法の開発において非常に重要な知見となる可能性を秘めており、全体としては順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に得られた複合体結晶構造に基づいた定着阻害剤候補ペプチドを設計し、その定着阻害効果の検証を行う予定である。具体的には、CofBに対して全長のCofJは一分子のみ結合するが、N末端のペプチドは三分子と多価での結合であることを利用し、ペプチドに修飾を加えることで、ETECが分泌するCofJよりも強固に結合可能な三量体化ペプチドの作製を試みる。定着阻害効果は、競合的なプルダウンアッセイ及び細胞を用いた定着実験を実施することにより確認する。
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Research Products
(2 results)