2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J06408
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 友一 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 未来思考 / 概念活性 / 時間概念 / 潜在連合テスト |
Outline of Annual Research Achievements |
将来経験するであろう事象について想像する能力は,エピソード的未来思考(以下,未来思考)と呼ばれている。うつ病臨床群では,未来思考において構築されるイメージの具体性が低下するという特徴が確認されている。うつ病の治療においては,場面想定法など未来思考を含んだ治療が存在するが,そもそもイメージする能力の低下が治療効果に影響していることが考えられるだろう。したがって,うつ病における未来思考の特徴について,より正確な理解が求められている。 抑うつ感は過去の事象に対して,不安感は未来の事象について抱くものとされる。また,うつ病臨床群や不安症臨床群においては,ネガティブな事象に自動的に思考が向かってしまうという症状が知られている。このことから,過去・未来といった時間的概念とネガティブ・ポジティブといった感情価が結びついてしまっているために,ネガティブな自動思考が生じやすくなっている可能性が考えられる。例えば,未来とネガティブという概念が結びついていたならば,未来思考の際に自ずとネガティブな思考になってしまうことが考えられる。そこで,まずは健常者を対象に,潜在連合テスト(implicit association test)と呼ばれる課題を用いて,時間概念と感情価の連合について検討した。結果として,健常者においては,抑うつ傾向や不安傾向の高低に関わらず,未来に対してポジティブ,過去に対してネガティブな概念が相対的に形成されていることが示された。また,不安の種類(全般性不安と社交不安)による概念的連合の違い(具体的には,「社交不安傾向が低い場合には,全般性不安傾向が高いほど未来をポジティブに捉えられなくなる」というパターン)は見られたものの,抑うつ傾向高群と不安傾向高群の間に有意な概念的連合の違いは確認されなかった。 今後は,臨床群で実際にどのような連合が形成されているかを検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算増額に伴い,実験を追加した。追加した時間概念と感情価の連合関係を検討する実験については,非常に順調に進行し,うつ病及び不安症臨床群を対象とした研究にまで至ることができた。この実験は,うつ病の未来思考性に関わる病態に関する基礎的知見を提供するだけでなく,臨床応用の可能性も高いことから,今後さらなる発展が期待できる。また,従来予定していた未来思考中の自発的な概念活性化に関する行動実験を,脳波計測も行うように改良した。しかし,そのために準備に時間がかかってしまったことは反省すべき点である。
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Strategy for Future Research Activity |
時間概念と感情価の連合関係を検討する実験を臨床群対象に実施する。また,未来思考中の自発的な概念活性化に関する実験を進め,臨床群を対象とした実験まで実施する。それらと同時に計算機実験を進める。
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