2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J06504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 智織 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 血液バイオマーカー / γセクレターゼ / Alcadein / p3-Alcα / アミロイドβ / sELISA / 早期診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症の最大疾患であるアルツハイマー病(AD)は、高齢化に伴い世界的に患者数が急増している。ADは無症候の内に進行し、認知記憶障害が現れる段階ではすでに神経細胞死が進んでいるため、早期診断が重要である。そのため、健康診断などでのマススクリーニングによりAD患者を早期に発見し、精密検査の前段階の診断として活用できる新たな診断方法の確立が重要である。本研究の目的は、従来よりも簡便で患者への負担が少なく、高精度なADの早期診断方法を確立することである。これまでの研究で、ADの発症機構に関連するバイオマーカーとして「p3-Alcα」というペプチドに着目し、脳脊髄液中のp3-AlcαがAD患者で有意に増加していることを明らかにしている。一方で脳脊髄液採取は患者への負担が大きく、簡易診断には不向きであることから、侵襲性が低くより簡便に採取できる血液からのp3-Alcαの検出を試みている。血液は脳脊髄液に比べ夾雑物が多く、また脳から移行するp3-Alcαも微量であるため、検出には試料の前処理や濃縮が必要である。その方法として、血液成分からのエクソソームの分離を行い、有用性を検討した。またp3-Alcαの測定法としてサンドイッチELISA(sELISA)を採用している。sELISAは少量の検体で一度に多数のサンプルを測定でき、また簡易的に測定できるため複雑な測定機器が不要で、測定場所が限局されないという利点がある。血液測定においては、脳脊髄液の測定に用いた抗体よりもさらに親和性の高い抗体が必要であるため、新たな抗p3-Alcα抗体の作製を行った。当該年度は簡易的なAD診断を目指し、微量なp3-Alcαを血液中からsELISAで検出する方法の確立に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画に関して、抗体の作製・評価は進行しているが、動物モデルを用いた実験は計画通りに進行していないためである。検出系の確立と血液からの検出を最優先し、本年度はマーカー分子であるp3-Alcαの検出系の改良および血液からの抽出方法の開発を主に行った。p3-Alcαの検出系の改良においては更に親和性の高い抗体が必要であるため、p3-Alcα38を細胞膜上に安定発現する細胞を免疫原として、特異的かつ高感度なモノクローナル抗体の取得を試みた。この方法では膜タンパク質とp3-Alcα38(抗原)のキメラ分子を発現させることで、正しくフォールディングされた抗原を細胞表面に効率良く発現できるという特色がある。このp3-Alcα38発現細胞をラットに免疫し、免疫後のラットから摘出したリンパ球とマウスミエローマ細胞を融合させハイブリドーマを樹立した。これをELISAによってスクリーニングし、単一クローン化・精製を行い、血液中のp3-Alcα38と反応するか既存の抗体と比較し検討を行っている。またこれまで血液中のp3-Alcαの検出方法として、有機溶媒(クロロホルム、メタノール混合溶媒)を用いた脂質除去による処理を行い、主要な分子種であるp3-Alcα35の検出に成功している。一方でAD発症機構に関連して変動すると考えられるp3-Alcα38は微量であるため、現段階では検出できていない。そこで私はバイオマーカーとして注目されている血液中のエクソソームの分離によるp3-Alcαの検出を試みた。そこで血液中のエクソソームをサイズ排除ゲルろ過クロマトグラフィーの原理で分離しエクソソーム中のp3-Alcαの有無を検証した結果、エクソソーム画分でp3-Alcα濃度が上昇していたため、エクソソームにp3-Alcαが分布、濃縮されている可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に進行したp3-Alcαの血液からの検出に関する研究を引き続き行う。抗体については既存抗体との特異性・感度等の比較を行ったのちに血液成分との反応性を検証する。またエクソソーム画分にp3-Alcαが含まれていることを質量分析法により解析を行い、より多くの血漿成分を用いて、エクソソームに血液由来の内在性p3-Alcα38が分布しているか検証し、血液測定系の確立を目指す。加えて平成30年度の研究計画に記載した、p3-Alcα測定がAD診断に有用であるというエビデンスを獲得する研究を行っていく。まず動物モデルを用い、脳と脳脊髄液、血液におけるp3-Alcα38/35値の相関性を解析する。さらにAD患者の脳γセクレターゼの変化をp3-Alcαが反映することを示すため、ヒトの脳サンプルを用いた解析を行い、産生されるp3-Alcα38/35を健常人とAD患者で比較する。またヒトで血中p3-Alcα値が認知機能と相関することを示すため、医療機関より提供頂く予定であるヒトのCSF及び血液のp3-Alcα38/35を測定する。複数の国内臨床機関から頂いたCSF、血液のp3-Alcα38/35を測定し小規模コホート解析を行う。患者の認知機能や他の診断結果と血中p3-Alcα38/35の相関性を示す。またオーストラリアのEdith Cowan Universityで国家プロジェクトAIBL(The Australian Imaging, Biomarkers & Lifestyle Flagship Study of Aging)の患者サンプルを測定し、大規模コホート解析を行う。併せて経時的なp3-Alcα38/35の変動を解析し、AD病態の進行との相関性を臨床的に明らかにする。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Induction of Amyloid-β42 Production by Fipronil and Other Pyrazole Insecticides2018
Author(s)
Cam M, Durieu E, Bodin M, Manousopoulou A, Koslowski S, Vasylieva N, Barnych B, Hammock BD, Bohl B, Koch P, Omori C, Yamamoto K, Hata S, Suzuki T, Karg F, Gizzi P, Haber VE, Bencetic Mihaljevic V, Tavcar B, Portelius E, Pannee J, Blennow K, Zetterberg H, Garbis SD, Auvray P, Gerber H, Fraering J, Fraering PC, Meijer L.
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Journal Title
Journal of Alzheimer's Disease
Volume: 62
Pages: 1663~1681
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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