2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞性免疫誘導型ワクチン開発に向けた魚類インターロイキン12の発現調節機構の解明
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17J06515
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
松本 萌 鹿児島大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | IL-12 / 貪食 / 顆粒球 / IRF-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブリ類に発生する細胞内寄生細菌感染症は、最も経済的被害が多く報告されている疾病である。このような細胞内寄生細菌に対する感染防御には細胞性免疫の誘導が必須であり、申請者はこれまでに魚類においてその誘導にはIL-12の産生が重要であることを明らかにしてきた。そこで本研究では、実用的な細胞性免疫誘導型ワクチン開発のため、魚体内におけるIL-12の産生調節機構を明らかにすることを目的とした。まずIL-12発現に必要な転写因子を明らかにするため、プロモーターアッセイを行った。IL-12発現に重要と思われるNuclear factor-kappa B (NF-kB), activator protein-1 (AP-1) およびInterferon regulatory factor -1 (IRF-1)の各転写因子結合領域を欠損したプロモーターをルシフェラーゼベクターと結合させた発現プラスミドを魚類細胞に導入し、LPSおよびIFNγ組み換え体で刺激した。その結果、IRF-1結合領域欠損プロモーターを導入した細胞において顕著な発光量の低下がみられ、少なくともIRF-1はIL-12発現に関与していることが示唆された。次いでこれら転写因子の発現が顆粒球の①貪食により誘導されるのか、②外来抗原受容体による抗原認識で誘導されるのか検討した。まず貪食による効果を検討するため、セルソーターにより貪食細胞を分画後、PI3キナーゼ阻害剤により貪食を抑制した細胞および未処理の細胞と、PKH26で染色した細胞内寄生細菌を共培養し、両試験区におけるIL-12の産生をサイトカイン染色およびELISAで、IRF-1の発現をリアルタイムPCRにより評価した。その結果、貪食を抑制した試験区では有意なIL-12産生、IRF-1発現の抑制が見られ、IL-12の産生には少なくとも貪食が必要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実験において、カンパチにおけるIL-12産生細胞は顆粒球およびマクロファージであり、特にIL-12の産生量が多い顆粒球に焦点を当てそのIL-12産生メカニズムを探索した結果、IL-12の産生には少なくとも貪食によるIRF-1の活性化が必要であることが明らかになった。申請者の実験計画では、初年度の計画として①カンパチにおけるIL-12産生細胞の特定、および②IL-12産生細胞の貪食によるIL-12産生効果の検討を目標としており、おおむね順調に進んでいると考えられる。一方、生菌を貪食した顆粒球ではIL-12産生が誘導されるが死菌を貪食した顆粒球はIL-12を産生しないことが分かり、またIRF-1も同様の傾向を示すことからIL-12産生には貪食だけでなく、IRF-1の発現が重要であることが予想された。そのため、顆粒球内での菌体の挙動(細胞内寄生能の有無)がIL-12産生に関与していることが考えられたが、当初予定していた細胞内寄生欠損菌株(Exported Repetitive Protein (ERP)遺伝子欠損N. seriolae)の作製が完成に至っていなかったため実験を行うことができなかった。そのため、次年度は細胞内寄生欠損菌株の特徴付けと、その菌体によるIL-12産生効果を検討することが必要である。また本年度得られた成果は学会で発表済みであるが論文投稿には至っておらず、これらの結果は来年度に論文執筆予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者はこれまでの研究で、カンパチの魚体内でIL-12を産生させるためには少なくとも顆粒球の貪食が必要であることを明らかにしてきた。一方で生菌添加時にも死菌体添加時にも共通して抗原の貪食は見られるにも関わらず、死菌体添加時にはIL-12発現が抑制され、それに伴いIRF-1の発現抑制も見られたことから、IL-12産生には貪食だけでなくIRF-1の発現が必要であると示唆された。さらにこの結果からIRF-1の発現には細胞内寄生体の特性が関与していると考えられている。次年度はまず、この細胞内寄生体による影響を調べるため、前年度作製途中であった細胞内寄生欠損菌株の作製を行う。カンパチ感染時の免疫応答を生菌接種時と比較し、免疫応答の違いを明らかにした後、その菌体を用いて顆粒球におけるIL-12産生効果を検討する。生菌接種時と比較して、もし応答に違いが現れた場合には、具体的な分子を明らかにするためmRNA-seqを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、その産生機構の解明に迫る。違いが現れなかった場合には細胞内寄生以外の特性がIL-12産生を誘導していることが予想されるため、細胞壁の組成や分泌タンパク質等の菌体の産生物が顆粒球に与える影響を明らかにする。さらに申請時に2年目の実験計画として予定していた②外来抗原受容体の抗原認識によるIL-12産生効果についても検討を行い、IL-12産生には貪食および外来抗原受容体、どちらの機構が重要であるか、明らかにする。
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Research Products
(7 results)