2017 Fiscal Year Annual Research Report
中赤外電場パルスによる強相関電子系の非摂動光学応答と相転移の実時間観測
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17J06673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 剛史 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 非線形光学 / 超高速現象 / 光誘起相転移 / 強相関電子系 / 分子性固体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高強度の中赤外レーザーパルスを物質に照射することで、従来の可視光レーザーパルスの照射では実現できなかった、物質の新奇な光応答を実現することである。同時に、レーザーパルス照射に対する物質の光応答を、より精密に検出するため、中赤外パルスの電場位相を安定化する技術の開発にも取り組んでいる。当該年度においては、大きく分けて二つの研究を行った。一つは位相安定な中赤外レーザーパルスを発生させるための新しい周波数変換手法の開発、もう一つはその中赤外パルスを励起光に用いた、有機電荷移動錯体TTF-CAにおける電子状態制御の研究である。 位相安定な中赤外パルスを周波数変換によって発生させる手法は、これまでほとんど報告されていなかった。本研究では、フィラメンテーションと呼ばれる現象を利用した周波数変換前のパルスの周波数広帯域化と、非線形光学結晶を用いたパルス内差周波発生を組み合わせた、新たな周波数変換手法を開発した。この手法は従来のものと比べて必要な光学系が簡便なことが特徴である。この成果はApplied Physics Express誌に投稿した。 また、上記の手法で発生させたパルスを用いて、有機電荷移動錯体TTF-CAにおける中赤外光励起の実験を行った。隣り合う分子が二量体化したイオン性相に中赤外光を照射することで、イオン性状態を保ったまま二量体化消失したことを示すかと反射率変化が観測された。このような応答は過去に行われた可視光励起では観測されておらず、中赤外光励起に特徴的な光応答であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、当該年度には周波数変換手法の開発と、それを用いたレーザー測定システムの構築を行う予定であった。上述した通り、当該年度においてはこれらの課題を解決、遂行したうえで、対象物質における測定を行い、新規の光応答を観測することに成功した。この意味で、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は有機電荷移動錯体において観測された、中赤外光励起の二量体化消失について詳細な研究を進める予定である。具体的には、反射率変化の励起光強度、温度依存性を詳細に測定することで、電子状態の変化をより詳しく調べる。これらに加えて、第二高調波発生の強度変化も測定することで巨視的な電気分極の変化についても調査する。得られた結果から、中赤外光励起特有の光応答が生じる機構を解明することが最終的な目標である。 また、TTF-CAだけでなく、他の分子性固体やモット絶縁体においても中赤外光励起の祖k杖意を行う予定である。
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Research Products
(6 results)