2017 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス状況下における記憶処理メカニズムの解明:臨床的応用可能性へ向けて
Project/Area Number |
17J06690
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
林 明明 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 成人精神保健研究部, 特別研究員(PD) (90726556)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 学習後ストレス / ノイズストレス / 記憶 / 記憶固定 / 偶発学習 / DRM / 虚記憶 / 処理水準 |
Outline of Annual Research Achievements |
意図的に覚えることを教示しない偶発学習課題の後に一過性のノイズストレスを課した場合、ストレスによって記憶成績が向上するかを検討した。偶発学習課題での学習刺激には、虚記憶を発生させるDRMパラダイム(Deese-Roediger- McDermott paradigm)の学習リストを用いた。学習課題で学習したリスト語のほか、学習していないルアー語の記憶(虚記憶)が生じるかどうか、学習後のストレスによる影響があるかを検討した。さらに、偶発学習時には処理水準の浅い条件と深い条件に分け、処理水準による影響も検討した。 星野(2002)より、連想価の高い8学習リスト (ルアー語:椅子、速い、さくら、太陽、切手、飲む、泳ぐ、足)を学習刺激とした。さらに、学習語リストを浅い処理水準と深い処理水準の2条件に分けた。PC画面上に刺激を呈示した。浅い処理水準では、単語の文字数が偶数か奇数かをキー押し判断するように求め、深い処理水準では単語の意味が参加者にとって快か不快かをキー押し判断するよう教示した(偶発学習課題)。学習後、参加者はアルファベットを判断するPC課題を5分行った。ストレス群の参加者はその最中に80dBのホワイトノイズが課され、コントロール群では何も音は流れなかった。さらに15分記憶のフィラー課題としてのPC課題の後、記憶テストとして再認課題を行った。学習された8リストおよび未学習の4リストのリスト語およびルアー語を印刷した冊子を用意し、それぞれの単語に対してRemember/Knowの再認判断の記入を求めた。 中間解析の結果、深い処理水準条件では浅い処理水準条件よりもルアー語の誤再認率が高い傾向にあった。さらに、深い処理水準条件ではRemember率も浅い処理水準より高く、学習時の処理水準が記憶成績に影響することが認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDの計画内の実験計画を受入研究機関の倫理委員会へ申請し、実施の承認を得るために時間がかかったため、実施中の実験でも引き続き参加者を集める必要がある。ただし、実施中の実験以外の実験についても、既に実験課題の作成や予備実験を終えているため、次年度からすぐに実験を始めることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度のつづきとして、ストレスによる非意図的記憶や連合記憶への影響に関する実験を引き続き行う。参加者をストレス群およびコントロール群に分け、ストレス群にはストレス負荷課題を課す。ストレスにはノイズストレスと社会的ストレスを用いる。また、昨年度予備実験を既に実施した自律神経機能としての心拍の測定を行う。本年度は研究2としてストレスホルモンのコルチゾールの測定を行う予定である。非意図的記憶として、単語の文字数や意味を判断する方向づけ課題を行い、また記憶テストまでの遅延を20分や1日置くなど、遅延時間を変化させる。また、研究3の予備的な研究として、再固定手続きによるストレス記憶の緩和のため、再固定の実験手続き、実験用刺激、呈示プログラムを作成し、予備実験を行う予定である。
|